プレバト!!の『俳句才能査定ランキング』で、初の特別永世名人梅沢富美男さん。
189句の句を詠んでついに50句の句集が完成しました。
句集 一人十色 この句集をもって「俳人」と名乗ってもらいたい、と夏井先生のエールです。
梅沢さんの俳句は格調高い、正道の俳句
お手本として、番組の締めの一句を詠まれています。
それでは、Mr.プレバト、梅沢さんの2019年4月からの俳句を、鑑賞して応援しましょう!
誰でもお気に入りの俳句に「いいね!」をできるようにしました。各句にこのようないいね!ボタンがついています。
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梅沢富美男さんの最近の俳句一覧
まくなぎのただ中にあり 無人駅
お題「無人駅」
まくなぎのただ中にあり 無人駅
まくなぎのただなかにあり むじんえき
添削なし
番組の締めにふさわしいかという夏井先生の判定で「お見事!」を獲得した句。
「あり」が勝負どころ、と夏井先生。普通は「おり」としてしまう。
「あり」と言い切ることで、無人駅がまくなぎの中にあるという不快さ、恐ろしさが増していく。
ポップコーンまじり 遊園地の落花
お題「遊園地」
ポップコーンまじり 遊園地の落花
ぽっぷこーんまじり ゆうえんちのらっか
添削なし
質感の対比が素晴らしいと夏井先生の評価。番組の締めの一句として「お見事!」を勝ち取りました。
最後に季語「落花」で余韻を残すところも大絶賛。いつもこういう句を詠んでと夏井先生。
水筒の囀り満たし 一息に
お題「水筒」
水筒の囀り満たし 一息に
すいとうのさえずりみたし ひといきに
添削後:
水筒はさへづる 囀りの真下
水筒のトゥクトゥクという注ぐときの音を囀りを一息で飲んだことを詠んだという梅沢さん。
夏井先生は、比喩に使った季語は鮮度が落ちることを伝え添削されました。
剪定や 鋏の音の霏々として
お題「シュレッダー」
剪定や 鋏の音の霏々として
せんていや はさみのおとの ひひとして
添削後:
言葉摘むに似て、剪定の鋏の音
番組の最後に締めの一句を披露することになった梅沢さん。
初回ではお題「シュレッダー」で句を詠みます。
梅沢さんは、夏井先生が句の添削をして言葉を刈り取っていくのを、樹木の剪定のようだと比喩を使って読みました。
夏井先生は、「言葉」の添削だと書かないとわからないと、「言葉摘む」と添削されました。
鞦韆に退職の日の花束と
春光戦決勝戦 第3位
お題「給与明細」
鞦韆に退職の日の花束と
しゅうせんに たいしょくのひのはなたばと
添削後:
退職の日の花束と鞦韆に
鞦韆とは「ぶらんこ」のことで春の季語。
給与明細をもらった経験がない梅沢さんは、ご自分くらいの年齢になると定年退職が見えてくる、
ブランコに乗っているように毎日毎日会社に行っていたが、いつかは降りなきゃならない、と詠んだ句だそうです。
夏井先生は、花束との「と」が大切で、花束と自分がぽつねんとそこにいる、と解説。
上五の「に」は説明になるので要注意だが、この句ではブランコに乗っているという「に」は大切。
語順を変えて、もう一度「鞦韆に」と余韻が戻っていく句に添削されました。
湯玉ふつふつ 春の厨の砂時計
お題「レトルト」
湯玉ふつふつ 春の厨の砂時計
ゆだまふつふつ はるのくりやのすなどけい
添削なし
厨とは台所のこと。
料理が得意な梅沢さんは、レトルトは使ったことが無かったので買ってきて試してみたと梅沢さん。
お湯が沸いてふつふつと湯玉がでてくるのが面白くて、砂時計を忘れてしまった実体験を詠んだそうです。
苦節2年10カ月で句集がついに完成しました!
いい句でしたと夏井先生。
湯玉のアップ。ふつふつというオノマトペのあと春が出てくる。
褒めないといけないのは着地。砂時計というものに焦点をもっていくと、ゆでるとか言いたくなるが、
ものを置いただけで、春という季節がキラキラし始める。
春という季節の光が、湯玉、厨にも、砂時計のガラスにもきらきらする。
ほっとしたと夏井先生!
句集は4月7日に出版予定です!
沸点の富士に近づく暮れの春
お題「富士山」
沸点の富士に近づく暮れの春
ふってんのふじにちかづく くれのはる
添削後:
沸点の低い怒りや 老いの春
梅沢さんが年老いて切れやすくなり、怒りの沸点が下がってきた。
そのことを、富士山の高地で沸かす湯が気圧が低いために低い温度で湧いてしまうことに重ね合わせて詠んだと梅沢さん。
夏井先生は、詰め込み過ぎと指摘し、「老いの春」と直して添削されました。
赤チンの膝の記憶や 養花天
お題「つまづく」
赤チンの膝の記憶や 養花天
あかちんのひざのきおくや ようかてん
添削後:
赤チンとイジメの記憶 養花天
「養花天」とは、桜が咲く時期の曇り空を表す季語。
幼い頃から旅役者として引っ越し続きの梅沢さんは、周囲の子からいじめを受けた苦い経験があるそうです。
傷口に赤チンを塗りながらいつか見返してやろうと思ったのを詠んだとのこと。
夏井先生は、赤チンと養花天の取り合わせを褒めながらも、本当に言いたいことはいじめられた記憶のはず、と添削されました。
お三時は固めのプリン 春の雪
お題「冷蔵庫のメモ」
お三時は固めのプリン 春の雪
おさんじはかためのぷりん はるのゆき
添削後:
甘すぎる固めのプリン 春の雪
あの頃の固めのプリン 春の雪
私の時代には、冷蔵庫などなかった。氷を入れて冷蔵庫の代わりにしていた。
私たちが初めて食べたプリンは、固めのプリンだった。それが春の雪のように少し溶けている、というのを詠んだ句。
先生から、固めのプリンと、春の雪の取り合わせは良かった。
お三時は入れたかったと梅沢さん。夏井先生はお三時は安易と添削されました。
練り物の 蓋持ち上げて おでん鍋
お題「おでん」
練り物の 蓋持ち上げて おでん鍋
ねりものの ふたもちあげて おでんなべ
添削後:
蓋持ち上げ おでんの練り物は膨る
光景はわかるが、語順が失敗と夏井先生。練り物とおでんが離れていると千原さんの指摘。
夏井先生は、普通ですと辛い評価でした。
夕の膳 二つ「ん」のつく冬至かな
お題「ラッキー」
冬麗戦第9位
夕の膳 二つ「ん」のつく冬至かな
ゆうのぜん ふたつ「ん」のつくとうじかな
添削後:
「ん」のつくもの二つ 冬至の夕の膳
冬至には「ん」が二つつくものを食べると運がいいといわれる、それを詠んだ句と梅沢さん。
夏井先生は冬至のかぼちゃ南瓜のことですね、とわかりますね。冬至の風習を俳句にして見た句。
なぞかけにするなら、順番が間違っていると夏井先生。
冬木立 シャンパン色にさざめきぬ
お題「イルミネーション」
冬木立 シャンパン色にさざめきぬ
ふゆこだち しゃんぱんいろにさざめきぬ
添削なし
シャンパンに泡が立ち上がっているように、風がサーっと吹いてきたらイルミネーションが泡のように立ち上がってきたという句と梅沢さん。
冬木立を揺らしていく、冬の美しい光や風がシャンパンのよう、さざめきぬ、という表現も光と風の表現だと思う、と夏井先生。
おっちゃんらしくない、美しい句だと評価され、梅沢さんのこの句は見事、掲載決定となりました!
榾の宿 主十八番の夢芝居
お題「カラオケ」
榾の宿 主十八番の夢芝居
ほたのやど あるじおはこの ゆめしばい
添削後:
榾くべて主十八番は「夢芝居」
榾くべて十八番といふを唸り出す
梅沢さんが田舎にいくと「俺の十八番は夢芝居なんだよ」と言われるという実体験を詠んだ句。
「夢芝居」は言わずとしれた梅沢さんの大ヒット曲です。
画角が緩いという夏井先生。
十八番は夢芝居だという人物が見えるように微調整した方がよい、と解説。
榾の宿といわずに主の動作を入れる句に添削されました。
ピザに焼く上顎の皮 雪催
お題「ピザ窯」
ピザに焼く上顎の皮 雪催
ぴざにやく うわあごのかわ ゆきもよい
添削後:
ピザに焼く上顎 雪催しんしん
季語は「雪催」
ピザを食べると、よく上顎の皮に火傷をし熱いな、と思いながら外を見ると雪が降りそうな空、という光景を詠んだ句。
夏井先生は「の皮」を書く必要がない、と辛口の指摘。そのぶんで「しんしん」とオノマトペを入れて添削されました。
吾子踏みぬ 銀杏落葉の無尽なり
お題「神宮外苑の銀杏」
吾子踏みぬ 銀杏落葉の無尽なり
あこふみぬ いちょうおちばのむじんなり
添削後:
銀杏落葉 歩きはじめた子に無尽
季語は「銀杏落葉」
梅沢さんのお子さんがよちよち歩きの時、ふと銀杏並木をみるとどこまでも銀杏の葉が繋がっていて、葉がどんどん降ってきた思い出を詠んだ句。
夏井先生は、よちよち歩きだというのがわかるように添削されました。
小さき手のピクルスつまみ出す小春
お題「スーパーマーケットのシャケ」
小さき手のピクルスつまみ出す小春
ちさきての ぴくるすつまみだす こはる
添削後:
ピクルスはパパに 小春のハンバーガー
季語は「小春」。
お子さんがハンバーガーから苦手はピクルスをつまみ出し、梅沢さんに渡していた思い出を詠んだ句。
夏井先生は、かわいらしい父子のエピソードとして描くべきと「パパ」を使って添削されました。
大中小 弁当箱に鮭の秋
お題「スーパーマーケットのシャケ」
大中小 弁当箱に鮭の秋
だいちゅうしょう べんとうばこにしゃけのあき
添削後:
鮭の秋 弁当箱の大中小
「鮭の秋」という季語は、鮭が川を上っていくという季語。
梅沢さんは、奥様とお子さん2人にお弁当を作っていた光景を思い出し詠んだそうです。
夏井先生は助詞「に」によって、お弁当箱に鮭の切り身が入るように読める点を指摘。
語順を変えて添削されました。
秋寒や 焦げた天麩羅箸の先
お題「セルフのうどん店」
秋寒や 焦げた天麩羅箸の先
あきさむや こげたてんぷらばしのさき
添削なし
「秋寒」が季語。天ぷら箸の先が焦げている、という光景を詠んだ句。
夏井先生は、天麩羅箸の「焦げた先」が状況説明でなく映像化されている点を指摘。
小林一茶の「秋寒」の句に近い味わいに、見事掲載決定と認められました。
ポケットにゴミ 爽涼のユニフォーム
金秋戦決勝第7位
お題「大谷翔平」
ポケットにゴミ 爽涼のユニフォーム
ぽけっとにごみ そうりょうのゆにふぉーむ
添削後:
マウンドのゴミ 爽涼のポケットへ
「爽涼」が季語。大谷翔平選手が、ゴミを拾う仕草が世界中で称賛されていることを詠んだ句。なんと爽やかな男だ、という思いを詠んだと梅沢さん。
夏井先生は、エピソードをうまく掬い取っている点を高評価。さらにゴミを拾う動作そのものを書くべきと、添削されました。
口開けの客は西瓜と連れ立ちて
お題「店のオープン」
口開けの客は西瓜と連れ立ちて
くちあけの きゃくはすいかと つれだちて
添削なし
季語は「西瓜」。その日最初のお客を「口開けの客」というのだそうです。
ごひいきにしている人気店に、行くときに食べ物を持っていく風習があり、おかみさんがお客さんからもらった西瓜を記って、ふるまう様子、人情を詠んだ句と梅沢さん。
夏井先生は、「西瓜」と連れ出してという表現を粋な擬人化だと大絶賛。見事掲載決定となりました。
赤べこの背なに揺られて山装ふ
ふるさと戦(福島県)
お題「磐梯吾妻レークライン」
赤べこの背なに揺られて山装ふ
あかべこのせなにゆられて やまよそおう
添削後:
赤べこの背なに揺らるるごとく秋
季語は「山装う」
赤べこは福島の有名な玩具で、頭をポンと押すと揺れているおもちゃで、バスの後ろに座ってレークラインを走ると、綺麗な紅葉が見えたという句。
夏井先生は、山装うと映像を描くのではなく、写真を信じるべきとして「秋」という語を使って添削されました。
車窓より 鹿島祭りの灯のはるか
ふるさと戦(茨城県)
お題「霞ケ浦の鉄道 北浦橋梁を走る列車」
車窓より 鹿島祭りの灯のはるか
しゃそうより かしままつりの ひのはるか
添削後:
車窓いま鹿島祭りの灯のはるか
茨城県の鹿島神宮のお祭り「鹿島祭り」が季語。
車窓から、鹿島祭りの篝火の明かりが見えるという光景を詠んだ句。
夏井先生はこの句を大絶賛。最後の「はるか」で遠近感が表現されていて写真俳句としても良くできているとべた褒めでした。
1位の句だけがポスターになりますが、この句もポスターにしてほしいという夏井先生でした。
月見草 文箱の底に出さぬ文
炎帝戦第9位
お題「メール」
月見草 文箱の底に出さぬ文
つきみそう ふばこのそこに ださぬふみ
添削なし
季語は「月見草」
出せなかった手紙が文箱のそこに残っているという光景を、月見草にかけて詠んだ一句。
夏井先生は季語に「月見草」を選んだ点を褒めながらも、出さない手紙を読んだ発想はありがちだと、上位入賞にはなりませんでした。
祭果て開くや風の通り道
お題「キッチンカー」
祭果て開くや風の通り道
まつりはて ひらくや かぜのとおりみち
添削なし
季語は「祭」。祭りの屋台で混み合い人も多くとても暑いが、祭りが終わるころにサーっと人がいなくなると、爽やかな風が通り抜けていく光景を詠んだ句。
夏井先生は、季語の本質を理解していると大絶賛。
夏の祭りが悪疫退散の意味合いがある点を挙げて、清々しい風が動き始めた句、と見事掲載決定となりました。
バーディで上がるホールや青葉木菟
お題「ガッツポーズ」
バーディで上がるホールや青葉木菟
ばーでぃで あがるほーるや あおばずく
添削後:
バーディーであがる 青葉木菟のホール
季語は「青葉木菟(あおばずく)」。
ゴルフでバーディーを取るととても嬉しくてガッツポーズをとると、青葉木菟(あおばずく)も「ホーホー」と鳴いて歓迎してくれている感じだという句。
夏井先生は、はしゃぎ過ぎと辛口評価。青葉木菟が置き去りになってしまうと指摘し、句またがりに添削されました。
赤札のプードルを抱く帰路夕焼
お題「クーポン」
赤札のプードルを抱く帰路夕焼
あかふだの ぷーどるをだくきじ ゆやけ
添削なし
季語は「夕焼」。
兼題写真から、値引き後の赤札に発想を飛ばした梅沢さん。
ペットショップの犬は大きくなると値段が下がることをかわいそうだといい、プードルを抱いて帰ったのを詠んだ句。
夏井先生は、「赤札のプードル」という描写を絶賛。
生き物である「プードル」に赤札(特価)をつけている意外性とかわいそうだという気持ちや、後半の着地、また、一緒に帰ろうねという思いでプードルを抱いていることが伝わってくるという点も評価して、見事、掲載決定となりました。
言の葉や 追えば消えゆく夏の蝶
お題「最後の一個」
言の葉や 追えば消えゆく夏の蝶
ことのはや おえばきえゆくなつのちょう
添削後:
言の葉や 追えば夏蝶風に消ゆ (ほか)
「夏蝶」が季語。梅沢さんは、俳句で言葉がなかなか浮かばず、「夏の蝶」(揚羽揚のこと)も同じように、追うといつの間にかいなくなるというところをかけて詠んだとのこと。
夏井先生は、上五の言の葉のイメージを良いと褒めつつも、「追えば消えゆく」という表現が蝶の描写にありがちだと指摘。
語順を変えて添削されました。
まず眼鏡次に手のひらすぐ夕立
お題「突然の雨」
まず眼鏡次に手のひらすぐ夕立
まずめがね つぎにてのひら すぐゆだち
添削後:
まず眼鏡 おでこ手の平 あら夕立
季語は「夕立」。 降り始めた雨に気づく瞬間に焦点をあてて詠んだ句。
眼鏡にしずくがつき、手を広げたら手に、それから本降りになった様子を詠んだ、梅沢さん。
夏井先生は、リアリティを強く褒めながらも、接続詞に音数を撮るよりも臨場感を、とおでこを加えて添削されました。
まろび来る 仔犬に夏の陽の香り
お題「待て(犬の写真)」
まろび来る 仔犬に夏の陽の香り
まろびくる こいぬになつの ひのかおり
添削後:
まろび来る仔犬は夏の藁の香よ
季語は「夏」。
帰宅すると転がるように迎えてくれる愛犬を「まろび来る」という言葉で表現。
愛犬を抱っこするとお日様にあたった藁(わら)のように香るという光景を詠んだ梅沢さん。
夏井先生は、陽のかおりの実感を褒める一方で、匂いがあいまいなため「藁」を使って添削されました。
舌先を花山椒に噛まれけり
お題「町中華」
舌先を花山椒に噛まれけり
したさきを はなさんしょうにかまれけり
添削後:
舌先を噛まれ花山椒ぴりり
舌先を噛まれ花山椒かおる
季語は「花山椒」。
口に入れた時に、下を噛まれたようにピリピリする感覚を詠んだ梅沢さん。
夏井先生は、切れ字「けり」の印象が前からずっとあった状況に今気づいたという印象であることを指摘。
感触を表現する例を挙げて添削されました。
公園の夕焼煮詰まれば帰る
お題「時計」
公園の夕焼煮詰まれば帰る
こうえんのゆやけ につまればかえる
添削後:
夕焼が煮詰まるまではまだ遊ぶ
季語は「夕焼」。
夕方5時に時計が鳴るが、夕焼けの色が変わって夕暮れになる時間まで遊んで帰ったという、梅沢さん。
夏井先生は、子どもだということがわかるように「まだ遊ぶ」を使って添削されました。
桜蘂降る ハシビロコウ瞬く
お題「動物図鑑」
桜蘂降る ハシビロコウ瞬く
さくらしべふる はしびろこうまばたく
添削なし
桜の散った後のこの時期、桜の蕊が降るのだそうです。
梅沢さんのこの句で、「桜蕊降る」という美しい季語があることを知りました。
微かな桜の蕊の降る音に、じっと動かないことで知られるハシビロコウが気づいて瞬くという、夏井先生絶賛の句でした。
暁光や 桜隠しの五稜郭
お題「ゴールデンウィーク」
暁光や 桜隠しの五稜郭
ぎょうこうや さくらかくしのごりょうかく
添削後:
桜隠しや 暁の五稜郭
北海道ではゴールデンウィーク頃に桜が満開になることから、寒いなと思った朝に桜の上に雪が積もっていて、その向こうに五稜郭が見えるという句を詠まれた梅沢さん。
夏井先生に季語が沈んでしまうと、語順と型を変えて添削されました。
髭あたる泡の甘やか 目借り時
お題「美容院」
髭あたる泡の甘やか 目借り時
ひげあたる あわのあまやか めかりどき
添削なし
床屋さんで髭を剃られるときに塗る泡の、甘い香りがして気持ち良く眠くなってしまう様子を詠んだ句。
夏井先生が説明してくださった髭を「あたる」という言葉の語源。
江戸っ子がサ行を発音するのが苦手で「剃る」を「する」と言ってしまうために、博打などで「する」を想像させてしまう。
ゲン担ぎのために「あたる」というようになったのだそうです。
日だまりに 仔猫の眠るボンネット
お題「満車の駐車場」
日だまりに 仔猫の眠るボンネット
ひだまりに こねこのねむる ぼんねっと
添削後:
ふわふわの 仔猫の眠る ボンネット
三匹の
お隣の
「仔猫」が春の季語。梅沢さんは猫がお好きなのだそうです。
中七、下五で「日だまり」に違いないと読み取れることから、夏井先生には、「日だまりに」の5音を使って、仔猫の様子を描写する添削例をたくさん挙げられました。
長閑なり 細くたなびく湯の放屁
春光戦 決勝第7位
お題「ハプニング」
長閑なり 細くたなびく湯の放屁
のどかなり ほそくたなびく ゆのほうひ
添削後:
長閑なり 湯にたなびける放屁の泡
温泉場に行って、やっと温泉に入れた時に思わず出てしまったおならを、長閑だな詠んだ句。
先に「湯に」とお湯の中であることを詠み、最後に字余りで泡の空気感をだし映像で押さえた句に、添削されました。
セルフレジだけのコンビニ 花曇
お題「セルフレジ」
セルフレジだけのコンビニ 花曇
せるふれじだけのこんびに はなぐもり
添削なし
セルフレジに行くとどんどん気持ちが落ち込んでしまう、それを「花曇」という季語と取り合わせたと梅沢さん。
夏井先生は、人工的なセルフレジ、コンビニとカタカナの語に、最後に「花曇」という季語を取り合わせた作りの句と解説。
「セルフレジ」へのささやかな困惑と「花曇」との響き合いがあると絶賛しました。
お歯黒のかすかにのぞく 雛かな
お題「おもちゃ屋さんの雛人形」
お歯黒のかすかにのぞく 雛かな
おはぐろのかすかにのぞく ひいなかな
添削後:
お歯黒のかすかに 雛の笑まひけり
お雛様の口元がかすかに開きそこからのぞくお歯黒を詠んだ句。
夏井先生は、説明している点を指摘し、むしろお雛様の表情をクローズアップする句に添削されました。
「笑まう(えまう)」という言葉、美しいです。
冬旱 地図から消えた 村の数
冬麗戦 第5位
お題「人生ゲーム」
冬旱 地図から消えた 村の数
ふゆひでり ちずからきえた むらのかず
添削なし
人生ゲームから発想を飛ばしたのは、故郷の福島。2011年の大震災のようなことが起こると、地図から消えていくような村が世界中にいくつもあるのだろうなという句、だそうです。
夏井先生は、この兼題写真から地図から消えた村の数に発想がいくという、その発想の深さにハッとした。災害や戦争、人が住めなくなった地域、国を示唆している。村の数と名詞止めにしているのも良い。
惜しいのは季語「冬旱」。冬旱によって地図から消えたと読めてしまう。別の季語であればさらに良い季語との出会いがいいかもしれません。
縫い初めの楽屋 朝日は母にさす
お題「カーテンを開けた瞬間」
縫い初めの楽屋 朝日は母にさす
ぬいぞめのがくや あさひはははにさす
添削なし
「縫い初め」が新年の季語。梅沢さんのお母様が、女形の梅沢さんのためにお客様からいただいた反物を、翌朝にはお着物に仕立ててくださっていた、というオリジナリティ、リアリティがある句です。
夜なべして楽屋で縫い物をされるお母さまに、朝日がさしている映像を描くことで、お母様への気持ちが詰まっている、その心情が伝わってくる句。
この句は見事、掲載決定となりました。
薄明かり 杜氏のすする粕の汁
お題「ヒートテック」
薄明かり 杜氏のすする粕の汁
うすあかり とうじのすする かすのしる
添削後:
杜氏らの すする粕汁 明けの星
「粕の汁」が冬の季語。「粕汁」の4音で使う努力が求められました。
4音で「粕汁」を使い、「薄明かり」をもっと映像があるように「明けの星」と添削されました。
冬ざれや 交差点蹴る明け烏
お題「冬の信号待ち」
冬ざれや 交差点蹴る明け烏
ふゆざれや こうさてんける あけがらす
添削なし
朝方の信号機の上の烏が、ぱっと飛んでいくのを詠んだ句。「明け烏」とは一夜の恋をした男女が明け方に別れる様を表す、色っぽい言葉でもあるのだそうです。
夏井先生は、時間や情景が鮮明である、と高評価。「冬ざれ」という映像を持たない時候の季語から、交差点が出てきて、「蹴る」という言葉で人かと思うと「烏」であるという点。
烏の蹴る音まで聞こえてくる、と見事、掲載決定となりました。
名画座のフィルムの傷の雪雑り
お題「映画館」
名画座のフィルムの傷の雪雑り
めいがざの ふぃるむのきずの ゆきまじり
添削後:
名画座のフィルムに雑ざる 雪の傷
名画座という言葉をうまく使っているところは褒めないと、と夏井先生の解説。古き良き時代の映画を上映する映画館とわかる。
雪だなぁとみえるのが実は傷である、という句に添削されました。
ますかけの手にある我の木の葉髪
お題「秋の東京駅」
ますかけの手にある我の木の葉髪
ますかけの てにあるわれの このはがみ
添削後:
ますかけの手相ぞ 我に木の葉髪
「ますかけ」線という強運を持つといわれる手相があり、梅沢さんの両手にはそのますかけがあるそうです。
徳川家康やキムタクさんにもあるのだそうです。
「手相」と書いた方がよい、と添削されました。
黒七味 蕎麦に振り込む義士祭
お題「七味唐辛子」
黒七味 蕎麦に振り込む義士祭
くろしちみ そばにふりこむ ぎしまつり
添削なし
赤穂浪士が討ち入りする前に、そばを食べたという逸話がある。赤穂浪士の志士の一人のご子孫が黒七味を作っているということを調べた梅沢さんの句。
夏井先生はの「義士祭」は歳時記では春の季語になっている、という言葉で、梅沢さんは一瞬固まってしまいました。
ですが、この句は見事掲載決定。夏井先生の大絶賛でした。
冷ややかや 湖畔に肺の晒されて
お題「富士と紅葉」
冷ややかや 湖畔に肺の晒されて
ひややかや こはんに はいのさらされて
添削なし
「冷ややか」が皮膚感にうったえる季語。
夏井先生は、「湖畔」で場所の想像ができる。「肺」という肉体と皮膚が響きあう。「肺」が清らかになっているとわかる。
また「晒されて」と余韻が残るのも良い、と大絶賛。見事、句集に掲載決定となりました。
伝言板くせ字も愛し秋うらら
お題「待ち合わせ」
伝言板くせ字も愛し秋うらら
でんごんばん くせじもいとし あきうらら
添削後:
秋麗や くせ字愛しき 伝言板
「秋麗(あきうらら)」が季語。梅沢さんが携帯電話のない時代の待ち合わせ場所の伝言板を思い出して詠んだ句です。
夏井先生は意図と気持ちはわかる、「伝言板」で時代もわかるといいながらも、「も」が散文的だと指摘し、添削されました。
龍淵に潜む 充電切れスマホ
金秋戦決勝6位
お題「バッテリー切れ間近」
龍淵に潜む 充電切れスマホ
りゅうふちにひそむ じゅうでんきれすまほ
添削後:
真っ黒な液晶画面 龍淵に
充電が切れて暗い画面になったスマホを、その中に龍が潜んでいるのではと発想を飛ばして、秋分の頃の季語「龍淵に潜む」と詠んだ句です。
夏井先生は、説明にあった「暗い画面」を使って映像にすればいい、と添削されました。
白秋や 漢字ドリルに書く名前
お題「宿題」
白秋や 漢字ドリルに書く名前
はくしゅうや かんじどりるに かくなまえ
添削後:
漢字ドリルに 白秋の我が名記す
中学までしか学校に行っていなくて、漢字がわからない梅沢さんは、俳句のためにドリルを買ってたくさん漢字の勉強をされてきた、漢字ドリルを買ってそれにご自分の名前を書くという、人生の秋を詠んだ句だそうです。
梅沢さんの向学心、学ぶ姿勢に胸を打たれたと夏井先生。そういう風にコツコツ勉強しているから小学生ファンが多いのだなとわかったそうです。
普通なら「ドリル」と書くところ、漢字ドリルとかくことで言葉を勉強しているとわかる。
自分の人生の中の秋というイメージをだそうとしているところもよく考えている。
小学生が書いているのではなく、じいさんが書いているとわかるダメ押しをした方がよい、と素晴らしい句に添削されました。
蜩の 声かけ流す 湯殿かな
お題「蜩(ヒグラシ)」
蜩の 声かけ流す 湯殿かな
ひぐらしの こえかけながす ゆどのかな
添削なし
コロナ前のころ、温泉に行って蜩の声を聴きながらお風呂に入ってほっとするなぁという思いを詠んだ句だそうです。
この句の夏井先生の評価は「掲載決定!」
中七の見立ての問題は、蜩の声をかけ流しているという見立てと、温泉をかけ流すという意図を持っている。
その意図とおりになっている。
「かな」という詠嘆は自分はそんな風に感じていますが、みなさんはどうですか?という判断をゆだねる意味がある。
その「かな」も使えている、掲載すべき句だ!と夏井先生の大絶賛でした。
火を纏う 遠州男児 筒花火
お題「打ち揚げ花火」
火を纏う 遠州男児 筒花火
ひをまとう えんしゅうだんじ つつはなび
添削後:
火まみれの遠州男児 筒花火
遠州男児の筒花火は、ご自分で長い時間をかけてつくり、30秒ほどの短い時間で
中七下五が非常に力強い。漢字表記も迫力を表現しようとする意図がわかると夏井先生。
1点、纏うという動詞が、ドレスを纏う、身に着ける、苔を纏う、べったりくっつくというというイメージのために、迫力の点で損をする。
勢いを感じさせる「火まみれ」として添削されました。
ババヘラの器用に咲かせ 砂日傘
お題「ソフトクリーム」
ババヘラの器用に咲かせ 砂日傘
ばばへらの きようにさかせ すなひがさ
添削後:
パラソルが派手で ババヘラアイス婆
ババヘラとは秋田でおばあちゃんがあちこちに出没して、お花のようにアイスをもりつけて売っているアイス屋さん。
梅沢さんはババヘラアイスが大好きなのだそうです。
夏井先生は、季語「砂日傘」でいいのか、砂日傘は海水浴場にさして日陰を確保するのをいう言葉。ただの傘として書けば良い、と添削されました。
若夏や Tシャツという戦闘服
炎帝戦 第6位
お題「Tシャツ」
若夏や Tシャツという戦闘服
わかなつや てぃーしゃつという せんとうふく
添削後:
若夏や Tシャツ一枚の闘い
梅沢さんは、私たちの時代はTシャツ1枚でお店にも入れなかった。自分たちにはそれしか着る服がなかった、と語ります。
「若夏」は沖縄の季語。若い時はTシャツが戦闘服のようなものだったという梅沢さんの句です。
夏井先生は、何々という戦闘服、何々という勝負服という言い方もないことはないといいます。
この句では説明、理屈の匂いはするが、「若夏」という沖縄をイメージさせる季語があり、Tシャツというものがあって、戦闘というところに別の思い入れがある句だなとおもって読んだ、と解説。
梅沢さんの詠みたかったこと、自分たちの若いころに生きることと闘っていたのが、よりわかるように、と添削されました。
玉葱を刻む 光の微塵まで
お題「夏野菜カレー」
玉葱を刻む 光の微塵まで
たまねぎをきざむ ひかりのみじんまで
添削なし
玉葱を細かく刻んでいると、こんな白く綺麗、宝石みたいだという句、だそうです。
観察眼と描写力を絶賛されたこの句は掲載決定。
アプローチが全く違う、季語のことだけで17音すべてを構成する、一物仕立てという実力がないとできない詠み方。
「光の微塵まで」という表現が詩になっている、と大絶賛。
オリジナリティとリアリティを褒めないといけない、と夏井先生の大絶賛でした。
南国の果実色して ハンディファン
お題「携帯扇風機」
南国の果実色して ハンディファン
なんごくのかじついろして はんでぃふぁん
添削なし
何十種類の色合いの扇風機をみて、ここは果物屋さんかと思うほどだったという梅沢さん。
南国の果実色だと感じとるところに詩があると、夏井先生から大絶賛のこの句は、句集に「掲載決定!」
語順も良く、南国という場所、果実という物、「して」で比喩とわかってハンディファンが出てくる、果物と人口のものとの落差、対比もある、と解説されました。
さらに、携帯扇風機と書くと字面が重くなるが、ハンディファンとすると表記も軽くなってぴったりです。
夏井先生から永世名人らしくなってきたと、絶賛されました。
永らえて 短夜をなほ持て余す
お題「寝坊」
永らえて 短夜をなほ持て余す
ながらえて みじかよをなお もてあます
添削後:
巡業の 短夜をなほ持て余す
逢いみての 短夜をなほ持て余す
若いころは一晩中寝ていたが、今の年になったらすぐに目が覚めてしまう。短い夏の夜でもすぐ目が覚めてしまう、という句。
しみじみと美しい句に見えるが、「梅沢富美男」がどこにも入っていない、と夏井先生。
梅沢さんらしさをだした句として添削されました。
百物語 最後の鏡に映る物
お題「ただ今のお待ち人数」
百物語 最後の鏡に映る物
ひゃくものがたり さいごのかがみにうつるもの
添削なし
「ただ今のお待ち人数」の経験がない梅沢さんは、百物語に発想を飛ばしたそうです。
百物語とは、数人で集まって百話の怪談話をし、一話終わるごとに百本のろうそくを1本ずつ消していき、自分の顔を鏡でみるイベント。
この句で梅沢さんは見事「掲載決定」
あえて語らない効果を夏井先生から絶賛されました。
子の傘に透ける窓あり 青蛙
お題「折りたたみ傘」
子の傘に透ける窓あり 青蛙
このかさに すけるまどあり あおがえる
添削なし
梅沢さん曰く、自宅のすぐ近くに小学校がある。お子さんたちが行き帰りするのをみると、子どもたちの傘に透明な窓がある。
その透明な窓から子どもが好奇心いっぱいに、「あ、蛙だ」とみている、という句。
いいところに目をつけたと褒めたいと夏井先生。特徴ある今どきの子どもの傘を詠んでいる。
思い通りの展開に読み手を引っ張ってくる。
蛙を見つけたあとの子どもたちの遊び方も想像できる。こういうのが確かな俳句というものだと夏井先生の大絶賛で句集に掲載決定となりました。
紫陽花の蒼きはぜるや 雨しとど
お題「雨宿り」
紫陽花の蒼きはぜるや 雨しとど
あじさいのあおきはぜるや あめしとど
添削後:
紫陽花の蒼きよ 雨にはぜる蒼
強い雨に紫陽花が跳ねているようだというのを詠んだという梅沢さん。
夏井先生は、この句は言葉がケンカしていると解説。
紫陽花がはぜるという感じ方がいいと夏井先生。「はぜる」という言葉のおかげで、紫陽花の色彩だけでなく動きが出てくるのを強く褒めたいと高評価です。
ただし、「しとど」と「はぜる」が五感の上でケンカしている。「はぜる」は勢い、「しとど」はぐっしょりと重い五感。
「はぜる」の一番良いところを活かさなくてはならないのに「しとど」で鮮度が落ちてしまうという解説でした。
紫陽花の蒼さを強調し、蒼がひきたち雨が脇役になる句に添削されました。
ナイターの売り子 一段飛ばし来る
お題「コーラ」
ナイターの売り子 一段飛ばし来る
ないたーのうりこ いちだんとばしくる
添削なし
野球観戦にいったとき、「いかがですか」と売り子の可愛い女の子が一段飛ばしでくるという句。
この句は句集に掲載決定!
季語からスタートするのは良い。夜の野球場、観客、歓声などが立ち上がってくる、と夏井先生。
「で」を除いている点は「で」で勢いを削いでしまうので「一段飛ばし来る」としたのではないか、
文語で「来」とすると臨場感がそがれる。そこまで熟慮したに違いないと信じていると夏井先生の高評価でした。
夏立ちぬ バタークリーム 強情で
お題「ケーキ」
夏立ちぬ バタークリーム 強情で
なつたちぬ ばたーくりーむ ごうじょうで
添削なし
最近は不調、ドン底だという梅沢さん。今回は一番苦労した俳句だそうです。
「バタークリーム」と「昭和の男」を重ね合わせました、という梅沢さん。
冷蔵庫に入れておくと入れるとカチンカチンになるバタークリーム。
昭和の男もバタークリームも強情だな、というのを書いた、といいます。
この句の査定結果は、掲載決定!
夏井先生の解説では、擬人化を成功させるポイントとして、映像が見えたり、音が聞こえたり、皮膚の感触が映像や音になってくれないと空虚な擬人化で終わるのだそうです。
今回の擬人化はバタークリームらしさが感触としてわかる。非常に素直に書かれていると、とても高評価でした。
帰国の日 アガシの白いハイヒール
お題「シューズ売り場」
帰国の日 アガシの白いハイヒール
きこくのひ あがしのしろいはいひーる
添削後:
帰国の日 アガシの白靴の悲し
帰国の日 アガシの白靴の眩し
アガシとは韓国語で「お嬢さん」のこと。
若い時にソウルに良く行っていた時、韓国のデパートの女性とお付き合いをしていたという梅沢さん。彼女に最後に靴をプレゼントした。
韓国では靴をプレゼントするのはお別れの印で泣かれてしまった。帰国の日にその靴をはいて見送りに来てくれた、という実体験を詠んだ句だそうです。
17音の俳句でドラマを書こうとチャレンジしているのは良い。
白靴という季語として白いハイヒールが捉えられるのか、という問題はあるが、もっと大きな問題がある。
帰国が晴れやかなものか、切ないかのヒントが入っていないのが問題。
3音を無視してはいけないと夏井先生のアドバイスでした。
縦横に 斜めに子らの昼寝かな
お題「昼寝」
縦横に 斜めに子らの昼寝かな
たてよこに ななめにこらの ひるねかな
添削後:
子ら三人 昼寝 縦横斜め 斜め逆
園児らの昼寝 縦横斜め逆
梅沢さんにはお子さんが3人いて、じっとして寝ていることはなく、時計の針みたいにあっちこっち寝る、その姿を詠んだ俳句とのこと。
夏井先生は、大切な情報が足りていない、と解説。
発想の面白さを俳句として出していくには、子らの人数がわからないと、なのだそうです。
夏井先生は縦横斜めだけでなく、さらに逆になっているという句に添削されました。
春愁をくしゃと丸めて 可燃ごみ
お題「分別タイプのゴミ箱」
春愁をくしゃと丸めて 可燃ごみ
しゅんしゅうをくしゃとまるめて かねんごみ
添削なし
嫌なことはくしゃっと丸めて、捨てましょう、という句。
この句は句集に掲載決定!
夏井先生からは、「詩の言葉にできている」というお言葉でした。
春愁を丸めるという発想の句を作ったことはあるが、可燃ごみという発想が面白く詩の言葉として成立しているそうです。
球春や ベンチ入りするボトルガム
お題「ボトルガム」
球春や ベンチ入りするボトルガム
きゅうしゅんや べんちいりするぼとるがむ
添削後:
球春や ベンチの端にボトルガム
球春や ベンチの端のボトルガム
「球春」はプロ野球が春に始まるのを季語にした方がいる。
大リーグでガムをくちゃくちゃ噛んでいるのをベンチ入りしたんだな、という句。
いいところはベンチにボトルガムを見つけたところが、目の付け所が良い。
「ベンチ入りする」という擬人化が臭い、と夏井先生。
助詞によって言えることが違うので、どちらにするかは梅沢さんが選ぶところ、だそうです。
飯盒を逆さにしばし 揚げ雲雀
お題「リュック」
飯盒を逆さにしばし 揚げ雲雀
はんごうをさかさにしばし あげひばり
添削後:
飯盒を逆さに蒸らし 揚げ雲雀
リュックからキャンプに発想を飛ばした梅沢さん。
飯盒を蒸らすときに逆さにした。ふっと空を見るとひばりが飛んでいて「のどかだな」というのを詠んだという句。
夏井先生は、「逆さ」にするのがわからない世代には、「蒸らし」とわかるように動作をかいてあげる配慮が必要、と言います。
「蒸らす」のには時間も含むから、だそうです。
やわやわと陽のあくび巻く 春キャベツ
お題「あくび」
やわやわと陽のあくび巻く 春キャベツ
やわやわと ひのあくびまく はるきゃべつ
添削後:
おひさまのあくびを巻いて春キャベツ
三浦半島に行ったときに、ふんわりふんわり巻いているキャベツを見て、これが春キャベツだなと思ったという句。
そろそろ季語を信じるということをしないのか、と夏井先生。
「やわやわと」とオノマトペを使うことで句が窮屈になっていまっていると、説明。
春キャベツにはやわやわとという感触が入っているので、ゆったりとした調べをつくるだけ、という夏井先生の添削でした。
「最初はグー」聞こゆ志村忌 春の星
春光戦決勝 第3位
お題「じゃんけん」
「最初はグー」聞こゆ志村忌 春の星
さいしょはぐー きこゆしむらき はるのほし
添削なし
梅沢さんは、「最初はグー」は志村けんさんが流行らせた。志村けんさんは生まれも亡くなったのも春なのだと説明されました。
夏井先生は、穏やかに自分の思いが伝わっていると解説。
「聞こゆ」が必要かが一番の問題だが、追悼の句だからあえて聞こえてきたと言いたいのだと理解するとのことです。
この句は明るい軽やかなリズムができていている。
忌日の季語だと「志村忌」は春だねという時がきっとくると夏井先生。
留守の間をルンバ操る仔猫かな
お題「家電量販店」
留守の間をルンバ操る仔猫かな
るすのまを るんばあやつるこねこかな
添削語:留守番の仔猫 ルンバに乗りたがる
ファンのお子さん達に喜んでもらえるように、ユーチューブなどに子猫がルンバに乗っている映像がよくあるのを詠んだという梅沢さん。
査定の結果は
なんと可愛い場面を描こうとしているのだろうと思うが、
「かな」がいいのか、操るという擬人化が問題と夏井先生。
子猫の様子を描写するだけで良い、と添削されました。
トリミング終えて 仔犬の腹や 春
お題「ドライヤー」
トリミング終えて 仔犬の腹や 春
とりみんぐおえて こいぬのはらや はる
添削なし
仔犬の夢子ちゃんがトリミングを終えて、パパだっこだっことお腹を見せて来る。いい匂いもして春だなあという句。
この句の査定の結果は「掲載決定!」
「や」の使い方が巧い!と夏井先生のコメント。
ドライヤーから仔犬のトリミングに発想がくるところを褒めないといけない。
「腹や」がうまい。清潔そうないい匂いがするに違いない。「腹や」と詠嘆しているが、結果、春という大きな季語も詠嘆するつくりになっている。
「いい句でございました」と夏井先生の大絶賛でした。
〆に出る オモニ自慢の干鱈汁
お題「焼き肉」
〆に出る オモニ自慢の干鱈汁
しめにでる おもにじまんの ひだらじる
添削後:
酒足りて あとはオモニの干鱈汁
いつも行く韓国料理のお店では、オモニ(韓国語のお母さん)が〆に干鱈汁をもってきてくれる、という句。
句材はいいが、上五が説明になっている、という夏井先生の評価でした。
春の雪 まだ現役の鯨尺
お題「加湿器」
春の雪 まだ現役の鯨尺
はるのゆき まだげんえきのくじらじゃく
添削例:春の雪 なお現役の鯨尺
加湿器の湯気から発想を飛ばした一句。
ストーブの上のヤカンから湯気が出ている。着物を縫うときにつかう一尺二尺が測れる鯨尺という物差しがある。それを使ってお母さまがご存命の時は、衣装をみな縫ってくれたのだそうです。
この句の査定の結果は、「掲載決定!」
少ない言葉でドラマが描けているという評価でした。
「春の雪」と「鯨尺」という言葉の出会いがドラマを見せてもらっているようだ、と夏井先生。
春の雪が降る中、暖かいお部屋で着物を縫っているのではないか、とわかる。
現役という言葉をうまく使った。お母さんがつかっていたのを今自分が使っているのかもしれない、と思える。
さすがだなと思いました、と夏井先生。
あえてもし夏井先生の句だったら「まだ」だと足りないという意味が入るので「なお」を使うと添削例を提示しました。
あえかなる 鏡の色をして冬日
お題「鏡」
あえかなる 鏡の色をして冬日
あえかなる かがみのいろをして ふゆび
添削なし
「あえかなる」とは触れれば落ちるような弱弱しい様を表現する言葉。
査定の結果は「掲載決定!」
夏井先生は「上手なフリをしていない」ところを評価。
今までのおっちゃんだったら、「あえかなる鏡の色の冬日かな」としたと思うが、「をして」を選んだところに成長の跡がみえると評価。
「鏡」で映像がひとつ手に入るが、読んでいくと「鏡の色をして」と冬日の比喩になるところがひとつ。
「かな」そするとただの詠嘆。「をして」とすると目に映ったものを淡々と描写していることになる。
これはもう「褒めましょう!」と大絶賛で、直しなしで掲載決定となりました。27句目でした。
風花や 改札口に 眼鏡拭く
お題「雪の東京駅」
風花や 改札口に 眼鏡拭く
かざはなや かいさつぐちに めがねふく
添削後:
改札を出て 風花に 拭く眼鏡
東京駅を出ると風花が眼鏡につき、それを拭くという梅沢さんの句。
ご自分も村上さんのように30㎝の写真が詠めるという梅沢さんは、「拭く眼鏡」の語順が良いといわれそうだが、自分としては「眼鏡拭く」なのだ、といいます。
夏井先生は、定石どおりに肩に入れてきたタイプの句。
この内容だったら、あなたが行動で見せて下さった語順で書いた方が、季語が活きる、と添削されました。
鏡越し ロット巻く手や 春隣
お題「輪ゴム」
鏡越し ロット巻く手や 春隣
かがみごし ろっとまくてや はるどなり
添削後:
ロット巻く手や 春近き日の鏡
いつも行く床屋さんには女性の客も来る。隣の席で女性がパーマをかけるのに、美容師さんがロットを巻く手が見える。それを見て「ああ、春が来るんだな」という句だと梅沢さん。
夏井先生は「鏡」、「ロット」、「春隣」という3つを取り合わせてきた判断はとても良いと高評価。
「や」で手を強調することで、手の動き、何をやっているかが具体的に見えてくる。ただし、鏡越しの「越し」がかすかに説明くさくなっていると添削されました。
「春隣」ではなく近い季語で「春近し」とし、ロット巻く手から始め、最後を鏡にすることで、鏡に春の近い光が集まってくる。
春近しという映像がない季語が力をもってくる。「おっちゃんならこれはやれる!」と夏井先生。
梅沢さん、「なんでこんなに直すの?」とちょっと納得いかなそうでした。
四日はや 雪駄でたぐる駅の蕎麦
お題「食券機」
四日はや 雪駄でたぐる駅の蕎麦
しがつはや せったでたぐる えきのそば
添削なし
季語は「四日」。お正月でお節に飽きてきたので雪駄を吐いて普段着のまま駅の蕎麦をたぐりに行ったという光景を詠んだ句。
査定の結果は、掲載決定!
夏井先生は「やっと語順がわかったな」と評価。
下五を「駅の蕎麦」としたことで最後の映像が蕎麦で終わり、美味しそうな蕎麦で香りや温かさやいろいろな余韻が残るのだそうです。
妻よりと 楽屋見舞いの加湿器来
お題「プレゼント」
妻よりと 楽屋見舞いの加湿器来
つまよりと がくやみまいの かしつき く
添削なし
御園座で公演をするとき、コロナの関係で誰も楽屋見舞いに来れない。そこに奥様からの加湿器が届いたという句。
査定の結果は、掲載決定!
「と」と「来」はうまい!今の時代を役者の立場から切り取ったという句だった。
「来」でとめたという決心がいいたのでは、加湿器を擬人化したところは永世名人だと大絶賛でした。
馬の鼻 やわらかきもの 雪催い
お題「ジーンズ」
馬の鼻 やわらかきもの 雪催い
うまのはな やわらかきもの ゆきもよい
添削後:
雪催い 馬の鼻とはやわらかき
かつて「アイルビーバック」という馬を持っていた梅沢さん。
預けていた北海道の牧場で馬の世話をしてくださっていた方たちはみなジーンズをはいているのだそう。
牧場で馬の鼻を触ってみるととても柔らかく、それを詠んだ句だそうです。
「雪催い」とは雪が降りそうだという季語。「雪催い」というと読者は空を見上げる視点を持ち、馬の鼻がとても近くにある遠近法になる。
暗い空、冷たい空気、そこに馬の鼻がでてきて、温かい息が出てくる。
「やわらかき」と連体形で止めると余韻が膨らみ、読者はもう一度空をみるのだそうです。
真珠婚 妻の手の染み 冬紅葉
お題「箱根の紅葉」
真珠婚 妻の手の染み 冬紅葉
しんじゅこん つまのてのしみ ふゆもみじ
添削後:
手の染みも愛し 紅葉の真珠婚
結婚して30年。はじめて二人で旅行に出かけたという梅沢さん。
真っ赤な紅葉をあれば色のくすんだ紅葉もあり。可愛かった母ちゃんの手に染みがある。俺が苦労させたからだな、と思って詠んだ句。
夏井先生は、「真珠婚の句を作ろうという殊勝な夫の気持ちは褒めておく。」と渋めの批評。
本当に妻のことを愛しているなら小さなところに配慮すると思う。この句では手の染みが割る目立ちする。と解説します。
また、冬紅葉はこのあと枯れるだけという印象を呼ぶそう。
「妻の」と、書くところにあざとい感じがする。妻と書いていい顔しようとしていると大変辛口な夏井先生。
添削のようにすると、紅葉の赤と真珠の白が紅白で印象に残るのだそうです。
何度目のオセロ 薄目のこたつ猫
お題「オセロ」
何度目のオセロ 薄目のこたつ猫
なんどめのおせろ うすめのこたつねこ
添削なし
子どもって勝つまで止めない。甥っ子、姪っ子とオセロで遊んだとき「とんこ爺 もう一回、もう一回」と何度もオセロをせがまれて、やっていた時に、猫が「まだやるの?」とみていたのを思い出して詠んだという一句。
この句は句集に「掲載決定!」
言葉以上の光景が見える!「これは良かった 本当に!と夏井先生、大絶賛です。
句の前半で、やれやれと思いながら相手をしている大人の表情が見える。
また、「こたつ猫」が冬の季語で、「薄目の」で、うっすらと目を開けてまだやってるのか、という猫の表情も見える。
梅沢さんの名句がまた1句生まれました。
火恋し 形見の竜頭 巻く深夜
お題「7時過ぎの時計」
火恋し 形見の竜頭 巻く深夜
ひこいし かたみのりゅうず まくしんや
添削なし
昨年、母親も叔母も、兄貴も亡くしたという梅沢さん。兄に生前ROLEXを贈っていたのが形見として帰ってきた。それをお兄さんの時間が止まらないように深夜に巻いたという句。
「これは良い句です!」と夏井先生。
「火恋し」が季語。竜頭で時計と言わずに時計とわかる。深夜に一人で偲びながら巻いているのがわかる。亡くなった方の時間を動かし続けたいという思いがわかる。と夏井先生大絶賛。
50句に入れてあげたいという評価でした。
芒散る雀色時 つく列車
お題「秋の電車」
芒散る 雀色時 つく列車
すすきちる すずめいろどき つくれっしゃ
添削後:
雀色時を 列車や 芒散る
ススキの穂がだんだん真っ白になっていく。さらっとした風でもぱぁっと散っていく。
雀色時は芝居のセリフ、空が雀色に染まる夕暮れのころのこと。と梅沢さん。
素材が良いと夏井先生。素晴らしい「雀色時」。ただし語順がもったいなく、ススキのアップで終わるように、「雀色時」が活きるように添削されました。
暮れてゆく 秋の飴色 セロテープ
お題「文房具」
暮れてゆく 秋の飴色 セロテープ
くれてゆく あきのあめいろ せろてーぷ
事務所ビルが来年新しくなるので、要る物、要らない物を掃除していたら、私がデビューしたころのきれいな女方の写真が出てきた。
ずっと貼ってあったのでテープが飴色になっている。
30年以上たってもまだ第一線でやっている、素晴らしいなと詠んだ句だそうです。
夏井先生は、暮れてゆくで秋の夕暮れの光景が出てくる。「秋の飴色」の響きあいが良い。
たかがセロテープだとわかる。チープなもので秋という大きな季語を描く。
梅沢さんの句は句集に載せてあげたいくらいいい句!と大絶賛でした。
2020年10月22日追記:
この句は、掲載されることになったそうです。
秋の灯に 透かす卵に 命あり
お題「たまご」
秋の灯に 透かす卵に 命あり
あきのひに すかすたまごに いのちあり
添削後:
電球に かざせる 秋の有精卵
この句には自分にしか詠めない、と豪語する梅沢さん。
昔は、卵は電球の近くに売っていた。有精卵なので、買うときに電球に透かすと血管が見えるときがある、そこで命を感じたという句。
添削のようにすると、秋という季語が有精卵の命をクローズアップしてくれるでしょう、と夏井先生。
野分の夜 ほぐす卵の のの形
お題「お箸」
野分の夜 ほぐす卵の のの形
のわきのよ ほぐすたまごの ののかたち
添削後:
朝寝して ほぐす卵ののの形
桜さく ほぐす卵ののの形
野分の夜 ほぐす卵に小さき渦
野分は台風のこと。 お子さんのお手紙がたくさんくる、子どもの気持ちで詠んでみようと思って詠んだ句。
のの形の台風の形になっている。
良い発想の部分もある。ほぐす卵がのの形は可愛くて良い。
野分の夜 に気づいたところも素晴らしい
発想と季語を活かす、一石二鳥を狙って損している。
季語を変えたパターンで添削されました。
レジ横の 「本日台風コロッケの日」
お題「コンビニのホットスナック」
レジ横の 「本日台風コロッケの日」
れじよこの ほんじつたいふう ころっけのひ
添削後:
「本日台風コロッケの日」の暴風雨
コンビニに行ったら、ホットスナックに「本日台風コロッケの日」と貼り紙があった。
ネットで調べると台風の日にコロッケを食べる「台風コロッケ」がブームになっていた、というのを詠んだという句。
台風が来るときにはまず飯を炊けと昔から言われていた。食べるための準備をしておくという句なのかと思ったと夏井先生。
「レジ横の」が芸がなく、季語を立てるために補強する言葉「暴風雨」を入れて添削されました。
ライスカレー 匙のすっくと氷水
お題「カレーライス」
ライスカレー 匙のすっくと氷水
らいすかれー さじのすっくと こおりみず
添削後:
氷水に匙直立す ライスカレー
50年60年前はカレーを食べるときには、お水のコップにスプーンがすっくと立っていた。ああいうことだったんだなぁと思いだして書いたと梅沢さん。
ライスカレーである時代の手触りが出てくる。
語順が問題と夏井先生。ライスカレーに匙をいれてすっくと掬っていると思ってしまう。
時代を知らない人たちにはわからない。と語順を変えて添削されました。
読み終へて 痣の醒めゆくごと朝焼
お題「本棚」
読み終へて 痣の醒めゆくごと朝焼
よみおえて あざのさめゆくごと あさやけ
添削なし
本を読み終えてふとみると夜が明けている。痣のように(空の色が)赤、紫、黄色へと変わっていく朝焼けだという句。
この句は「掲載決定!」21句目です
やっと新境地を切り開いたと思うと夏井先生にきっぱり。
「読み終へて」で時間経過がわかる。なんで痣?と思い朝焼けの比喩だとわかった瞬間のはっとする驚き!
読み終わった後の心情の痣とが響くようでもある。
夏井先生に「初めて純粋に梅沢さんに期待を抱いた」といわしめる今日の名句でした。
「これがタイトル戦だったら?」
と聞く梅沢さんに
「ダントツ優勝でした!」と夏井先生。
梅沢さん、おめでとうございました。
行合の空の御朱印めぐりかな
お題「ポイントカード」
行合の空の御朱印めぐりかな
ゆきあいのそらの ごしゅいんめぐりかな
添削なし
季語がない句。御朱印ってポイントカードのようなものだなと。「行合の空」は夏の空と秋の空が交わっているのだと梅沢さん。
夏井先生は「行合の空」をどう評価するかがポイントとなると解説。
歳時記には季語としては載っていないが、そのチャレンジ精神には敬意を表したい、と夏井先生。
2020年7月の俳句
お題「サンダル」
水玉の模様 クロックスの日焼け
みずたまのもよう くろっくすのひやけ
添削なし
クロックスは履いたことがないが、娘さんが水玉模様に足が日焼けしたと話していたのを聞いて詠んだ句、だそうです。
俳句集への20句めの「掲載決定!」となる夏井先生が認める傑作が誕生しました。
「水玉の模様」という言葉からは生地を思い浮かべる人がほとんど。
そのあとでクロックスの穴の日焼けだわかり、涼やかな色の水玉から、日焼けした肌の水玉に色が変わるというところが語順の勝利だ!と夏井先生、大絶賛でした。
お題「ペットボトルのお茶」
藻の花や ペットボトルにさやさやと
ものはなや ぺっとぼとるにさやさやと
添削後:
ペットボトル冷えて藻の花 さやさやと
米原の街道筋に綺麗な水が流れている。藻の花がきれいで、スイカやペットボトルが水の中に冷やされているという句。
「藻の花」が季語。川や泉を思い浮かべる。ペットボトルが出てきたときに川の水で冷やしていると思ってくれるのか、と夏井先生。
ペットボトルが冷やされているようにわかる句に添削されました。
2020年6月の俳句
お題「100円ショップ」
シンクの西日 カップ焼きそばの「ボコン」
しんくのにしび かっぷやきそばの ぼこん
添削後:
湯捨つれば 西日のシンク 鳴る「ボコン」
梅沢さんが、100円ショップに行ってカップ麺が置いてあるのを見て、苦労した時代を思い出した。17歳の頃、カップ焼きそばを作っていた時、お湯を捨てるとシンクが「ボコン」と鳴ったという、体験談の句。
「お湯を捨てる」ということがわかるように「湯捨つれば」を入れ、季語の「西日」の比重が沈んでしまうので、際立つように添削されました。
お題「紙袋」
桐の花 いつかは来ない 紙袋
きりのはな いつかはこない かみぶくろ
今回は初心に戻って詠んだと梅沢さん。
「意外な展開の味わい」と評価されました。
「桐の花」と「いつかは来ない」で高尚なことをいうのか、と思いきや「紙袋」という俗なものがでてくる。
作者が狙ってきている句だと評価!
紙袋は「いつか使う」と思ってみんな置いているが、中七で「いつか」とかぎかっこをつけると意味がわかりやすくなるが、謎の分量は減る。
この句は夏井先生も絶賛。永世名人になって初の俳句本への
「掲載決定」!
夏井先生が認める傑作が誕生しました。
2020年5月の俳句
お題「100円玉」
おひねりや 子役の見得に 夏芝居
おひねりや こやくのみえに なつしばい
添削後:
おひねりの 飴よ硬貨よ 夏芝居
「夏芝居」が季語。こども歌舞伎をよくやる。見得をきると客席の人たちがおひねりをもってくる。
夏井先生の査定は厳しく「ボツ!」
もったいないのは、中七。おひねりが飛ぶタイミングはわかっているのだから「見得に」と書くのは野暮。
子役と書かないで想像させるのが永世名人だと添削されました。
お題「デリバリー」
半夏生 宅配ピザの Mサイズ
はんげしょう たくはいぴざの えむさいず
添削後:
〇〇〇〇〇 ピザMサイズ 持て余す
(〇〇は季語をご自由に、とのこと)
「半夏生」という季語を自慢げに、モニター出演メンバーに説明した梅沢さん。
ですが、季語の説明が雑だと夏井先生にダメだしされてしまいました。
夏井先生は、中七下五に芸がない。ピザがMなのに余っちゃうというところが重要なのだと添削しました。(季語はご自由にという添削です)
お題「めがね」
道中を終えて眼鏡の禿かな
どうちゅうを おえてめがねの かむろかな
添削後:
道中終え 禿の役の子の眼鏡
梅沢さんの永世名人昇格をお祝いする記念スペシャルで詠まれた句。
「道中」は花魁道中のことで春の季語。禿(かむろ)とは花魁の見習いの幼い子供。
花魁道中をやってきて、それが終わった禿役の子どもがお疲れ様と言って眼鏡をかけたのが可愛いという句。
女形をやっている梅沢さんらしい句です。
残念ながら「ボツ!」の査定で、初のプレバトシュレッダーが登場しました。
お題「春のお花屋さん」
花束の 出来る工程 春深し
はなたばの できるこうてい はるふかし
添削なし
花束をつくるのが上手な花屋さん。花束ができる工程を見ているときに、春なんだなぁと思った気持ちを詠んだという句。
梅沢さんは、落ちてもいいから本来の梅沢富美男の俳句を詠もうと心を入れ替えましたと、おっしゃいます。
梅沢さんはこの句で、ついに永世名人に!
夏井先生の評価は、
季語を信じている。永世名人は「季語を信じる力」を持った人に差し上げたい称号!
だと、絶賛でした。
非常に難しいことに挑戦してくださったという夏井先生。
どんな花束なのかが書いてない、「工程」はある程度の時間を意味している。
上五、中七には具体的なことは何も書かない。そうなれば、下五は具体的な映像を持った季語を置いて安全策を取るのが普通。
ところが「春深し」は春の時候の季語。
こうすることで、読み手の脳の中には、水や花ばさみの切っ先やセロファンや、花束ができあがっていく光景が思いうかべられ、読み手にそれを手渡せる句だと評価されました。
梅沢さん、おめでとうございます。
2020年4月の俳句
お題「ランチの看板」
まかないの うどあえすがし はるのくれ
添削後:
まかないの独活あえ 春の暮 清し
10年前に和食のお店をやっていた。まかないのご飯を食べるときに、ウドがおいしかったのを思い出したという梅沢さんの句。
「独活あえ」と「春の暮」はあえての、季重なりだそう。
「まかない」という言葉の1単語で人物・店・料理が伝わる経済効率がいい。また、「独活あえ」と「春の暮」はお互いを殺さない季語を選んでいる。と、夏井先生。
名人は求められるレベルが高いですね。
お題「不動産屋さん」
風呂なしの 四畳一間の 三葉芹
ふろなしの よじょうひとまの みつばせり
添削後:
三葉芹挿して 風呂なし 四畳半
私の人生を詠んだ!と梅沢さん。
15歳で東京にでてきて17歳で初めて自分の部屋を持った。自炊していて三つ葉はコップにいれておく増える。
いつかは自分もこのようにたくさんの大輪の花を咲かせたい、(そのとおりになったけど!)と詠んだ句でした。
夏井先生は、「三葉芹がコップにさすところが書かれていない。清く貧しい生活、美しい心を書かないと!」と指摘しました。
2020年2月の俳句
お題「天気予報」
花粉来て 獺の祭りのごと ちり紙
かふんきて おそのまつりのごと ちりし
添削例:
花粉万来 獺の祭りのごと ちり紙
この句には玄人の工夫が2つもある、と夏井先生。
「獺の祭り」の季語の意味は、獺(かわうそ)がとった魚を並べる習性が、まるでお供えしてご先祖を祭っているようだということから生まれた季語。
「花粉来て」は近い将来季語になってくるのではないかという言葉。
古いマニアックな季語を比喩に使い、次の時代季語になるかもしれない言葉を新旧活かし、さらに雅な季語を使った後で「ちり紙」で俗に落とす技も素晴らしいと、夏井先生、大絶賛でした。
お題「観覧車」
長閑なり かの日の屋上遊園地
のどかなり かのひの おくじょうゆうえんち
添削なし
昔はデパートの屋上に遊園地があった。自分の子どもを連れて行ったときに、観覧車に乗せたなぁという思い出を詠んだ句。
「長閑」が春の季語。映像がない季語と「かの日」も映像がない語。しかし「屋上遊園地」だけでかの日の年代や光景がすべてわかる句でした。
お題「美容室」
白髪の薄色に染め春たちぬ
はくはつの うすいろにそめ はるたちぬ
添削後:
白髪をうすむらさきに春立ちぬ
永世名人目前の梅沢さん。
「染め」はいらなかったと夏井先生。中七をひらがなにしてとてもゆったりと時間が流れる句になりました。
2020年1月の俳句
お題「銀座での買い物」
春近し 鳩居堂二階 句帳買ふ
はるちかし きゅうきょどうにかい くちょうかう
添削なし
中七をあえての中八にしたタブーにチャンレンジしたという梅沢さん。
春を待つ冬の季語で、新しい句帳を買う喜びを表現した梅沢さんのこの句。
夏井先生の評価は、「星1つ前進!」 ついに☆4つです!
梅沢さんおめでとうございます!
永世名人目前です。
お題「1月の浅草の着物」
爪皮の 紅のさくさく 霜柱
つまかわの べにのさくさく しもばしら
添削なし
「さくさく」で「さくさく」というオノマトペで音、動作、感触の3つの情報を伝えていると夏井先生が絶賛!
五七五は調べが安定していて落ち着いていて一番いい、と夏井先生。
梅沢さんはこの句で、☆1つ前進で、星3つに!
お題「お鍋」
湯豆腐にすの立ちはじむ四方の春
ゆどうふのすのたちはじむ よものはる
添削後:
湯豆腐にすの立ち 四方の春の酒
季語を2ついれるタブーにチャレンジをしたという梅沢さん。そのチャレンジは夏井先生にも大きく評価されました。
「すの立ちはじむ」を終止形でなく、添削のようにしていたら一位だったという句でした。
2019年12月の俳句
お題「年末年始の駅弁売り場」
初旅やほのかに匂ふポリ茶瓶
はつたびや ほのかににほう ぽりちゃびん
添削なし
ポリ茶瓶を知っている世代は、少ないのではないでしょうか。アラフィフの私が子どもの頃に見たことがあるくらいです。
この句は基本の型を使った安定感がある句。夏井先生は、「ちゃんと確保しにきたんだな、おっちゃん」と一言。
決勝戦に確実に駒を進めるために梅沢さんが安定感のある句で手堅く固めてきたことを見抜きました。
2019年11月の俳句
お題「満員電車」
乗り換えの マフラーの波 寡黙なり
のりかえの まふらーのなみ かもくなり
添削なし
夏井先生に3つの工夫があると絶賛された句。久々の一つ前進査定となり、首位独走状態をキープしています。
「寡黙なり」という断定することで逆に乗り換え駅の音の満ちた喧騒が伝わってくるとの評価でした。
2019年10月の俳句
お題「秋の物産展」
茎漬けに添へて売り子の土地訛り
くきづけに そえてうりこの とちなまり
添削後:
茎漬けの美味し売り子の土地訛り
茎漬けの塩っぱし売り子の土地訛り
茎漬けを打っている売り子さんの訛りに懐かしさを感じている句。
夏井先生は、茎漬けから具体的に描くのは良い、懐かしく思っているのだろうなぁというのがわかるので、「添へて」と書く必要はないという評価でした。
お題「歩行者信号」
徒歩(かち)で行く 免許返納 秋の風
かちでいく めんきょへんのう あきのかぜ
添削後:
秋風を歩きて免許返納す
芸能人として大人気の梅沢さんの実のお兄さんがもし自分が事故でもおこしたら梅沢さんに傷がつくと免許を変更してくれた時のことを詠んだ句とのことです。
2019年8月の俳句
お題「夏の終わり・夕方の空港」
秋夕焼機内に遺影の席ひとつ
あきゆやけ きないにいえいの せきひとつ
あえての中八で、第三者がみたはっとする機内の光景を描いている句です。
2019年7月の俳句
お題「夏の波紋」
鯉やはらか喜雨に水輪の十重二十重
こいやわらか きうにみずわの とえはたえ
鯉が身をくねらせってゆったりと泳ぐ様子を、「やはらか」と表現する梅沢さん。
「喜雨」という季語や「十重二十重」と格調高い言葉をさらっと使われる梅沢さんに感嘆します。
2019年5月の俳句
お題「5月の昼休み」
薄暑なり日常を行く喪服の吾
はくしょなり にちじょうをいく もふくのあ
添削後:
喪服の吾行く日常といふ薄暑
明るい5月の昼休みの風景から、そこから明らかに浮いた存在となっている喪服の自分に発想をとばす梅沢さんに、夏井先生も感心していました。
お題「学校の蛇口」
緑青のカラン石けんネット揺れて夏
ろくしょうのからん せっけんねっと ゆれてなつ
緑青の錆がういた蛇口のアップ映像から石けんネット、最後は夏という体言止め。夏井先生が手放しで大絶賛の句でした。
2019年4月の俳句
お題「ゴールデンウィーク」
手放せぬティッシュの甘く養花天
てばなせぬ てぃっしゅのあまく ようかてん
添削後:
保湿ティッシュ甘くあまやか養花天
保湿ティッシュは舐めると甘いというところから養花天という季語に発想を飛ばした一句。
お題「自動ドア」
退院の雲なき空やつばくらめ
たいいんの くもなきそらや つばくらめ
高校生との他流試合で詠んだ一句。退院した日の感慨が、自動ドアの向こうの空の青さや燕ののびのびと飛ぶ様子から浮かんできそうです。
お題「春のクリーニング店」
店先の香箱座り暮れの春
みせさきの こうばこすわり くれのはる
ほのぼのとした春の夕の、店先の猫の香箱座りが目に浮かぶ一句です。下関に行ったときに見た光景から詠んだ句だそうです。
お題「コーヒー」
鷹鳩と化すカフェオレの白き髭
たかはととかす かふぇおれのしろきひげ
「鷹鳩と化す」こんな季語があるのですね。「どう猛な鷹がおとなしく優しくなるほどの春」という意味の季語だそうです。
一見怖そうな人もカフェオレの泡の白いひげが付いたら、ユーモラスに見えてきますね。
2019年4月以前の俳句から
名人の句を集めた記事に掲載した句をこちらに掲載します。
お題「ひな祭り(紙雛)」
紙雛のにぎやか 島の駐在所
かみびなのにぎやか しまのちゅうざいしょ
2019年2月月間MVH受賞句です。
のどかな島の駐在所で、駐在さんを訪れる島の子どもやお年寄りたちが紙雛を持ってきてくれる、机の上ににぎやかに紙雛が並んでいる光景が詠まれています。
島の人たちに愛されている駐在さんが映像として浮かぶこの句は夏井先生から称賛をされました。
お題「春のベランダ」
プレバト歴代優秀句30作
水やりはシジミ蝶起こさぬように
みずやりは しじみちょう おこさぬように
プレバト俳句歴代ベスト50句に選ばれた作品です。
蝶を驚かさないように、そおっと水をやるという梅沢さんの優しさが出ている句です。
お題「冬の自動販売機」
牢名主のごと 自販機のおでん缶
ろうなぬしのごと じはんきのおでんかん
広島の新幹線ホームで自販機に「おでん」を売っていたのを見て印象に残ったそう。おでん缶が自販機にデーンと中央に並んでいる姿が、まるで牢名主のようだったという句です。
夏井先生は直喩の「落差」を絶賛しました。
お題「ラジカセ」
プレバト歴代秀逸句15作
旱星ラジオは余震しらせおり
ひでりぼし らじおはよしん しらせおり
梅沢さんが初のタイトル戦優勝を飾った句が、プレバト歴代秀逸句にも入りました。
旱星という言葉が印象に残る俳句ですね。
梅沢富美男さんの俳句のまとめ
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このサイトを梅沢さんが観てくださると嬉しいな!と思います。
2019年4月までの句を掲載しましたが、この句も載せてというご希望があれば、どうぞコメントでお寄せください。
できる限り掲載していきたいと思います。
よろしくお願いします。
梅沢さんの過去の全俳句はこちらのプロキオンさんのサイトから!
成績も含めてすべての情報がまとまっています。