ヨガを始めてみようかな、でもヨガの効果って?体にはどんないいことがあるの?と知りたい方に。
実際にヨガを行った時、体の中ではどのような「生理現象」がおこって体に良い影響をもたらしているのが初心者にもわかりやすくまとまっている本がありました。
「生理学」の観点からみたヨガの知識を、体を動かし実際に体感して学べる本「体感して学ぶヨガの生理学」です。
理学療法士でヨガスクール「アンダーザライト」のインストラクター中村尚人先生(RYT500)が書かれました。
体のしくみと働きからヨガの効果と理由がわかるように解説されたこの本から、ポイントを絞って紹介します。
漠然と身体だけ動かすより、ヨガで体の中の変化を学び、ますます効果的にヨガをできるようになりませんか?
※RYT500:Registered Yoga Teacher 500
この本から学んだことをご紹介します。
ヨガの生理学とは?
ヨガのポーズの動きや姿勢のように、外から見える「解剖学」に対して、ポーズによって体の中で起こっている目に見えない働きが「生理学」と考えると良いそうです。
生理学:目に見えない働き
なぜヨガをすると気分が良くなるのか
なぜ呼吸が変化するのか
なぜ様々な体の不調が改善されることがあるのか
ヨガを行うことで体の中で起こるさまざまな反応は、生理学の視点で説明できます。
ヨガとは体の恒常性を高めるもの?
ヨガの生理学を説明するときのキーワードとなる言葉に「恒常性(ホメオスタシス)」という用語があります。
外部環境が変わっても体は一定の状態を保つよう働く、それが生理学的反応です。
ヨガとは、「日常の各種ストレスによって乱れた体を本来のバランスのとれた状態に戻す行為」だと言え、「体の生理的な恒常性を高める」ことが、ヨガの実践の身体的な目的だそうです。
体の生理的変化を感じてみる
ヨガの実践を通し、自分の身体に起こっている不思議なシステムを感じる方法を学びました。
①片方ずつ鼻を閉じ、どちらがより詰まっているかを調べる
②通っている方の鼻を閉じ、息を止める。苦しくなって息が吸いたくてたまらなくなるまで。
③通っていた方の鼻と閉じたまま、詰まっていた方の鼻から息を吸う
⇒鼻が通っている(体が酸素を吸うためいっきに鼻腔を変化させたため)
手を温める方法
①手の温度を触れて確認する
②座って太ももの上に手を載せる
③太ももの体温を手で感じる。同時に手がどんどん温かくなるイメージをする
④3分後に再度手の温度を確かめる
(血圧が高い人はやってはいけない)
①軽く息を吸う
②息を止めてお腹を締め胸を下げて力む
自律神経の状態を感じる
吸う:交感神経優位 吐く:副交感神経優位に
①手首に指をあて脈を感じる
②大きく息を吸ったり、吐いたりして脈拍の変化を感じる
体の変化がわかって面白いです。
体の感覚について学ぶ
感覚について、ヨガの生理学から学びます。
80%が視覚に頼っている感覚器。ヨガをするとき目をつむるのは視覚情報をシャットアウトするため。
ヨガでは、坐法で足を固定し、ムドラー(手印)で手を固定し、手も足も視覚もシャットアウトして自分を見つめます。
視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚の五感は体の外側の変化を察知する感覚受容器ですが、体の内側の変化を察知する感覚受容器があります。
血圧変化を感じる「圧受容器」、筋肉の伸びの変化を感じる「筋紡錘」、体の傾きや姿勢の変化を感じる「三半規管」などがそれにあたります。
これらの内部を察知する感覚器を鍛えることが、「感覚を研ぎ澄ます」ことになります。
バランスをとるポーズで使う内耳で察知する平衡感覚や、体の筋肉や関節で感じる深部感覚もヨガの練習で体感することができます。
アンダーザライトの向井田みお先生の瞑想前に姿勢を整える際に行っている動きでした。
呼吸を制御し心をコントロール
呼吸について、ヨガの生理学から学びます。
生まれてから死ぬまで休みなく行っている呼吸。
呼吸は肺で行っていますが、肺は自力では吸気できず、横隔膜や肺周辺の筋肉によって動かされています。
肺は胸にあると考えがちですが、肋骨の上部は鎖骨より上の首の根元まで広がっていて、首にまで呼吸が入ります。
呼吸には胸椎と肋骨の柔軟性がとても大切になり深い呼吸につながります。
また、いろいろなアーサナで、お腹、胸骨、背中、首とさまざまな部位の必ずどこかに呼吸できる部位があることがわかります。
ヨガの呼吸は、体に良いとされる有酸素運動になるのはフロースタイル(ヴィンヤサ)などの一部のヨガで、通常は、ヨガではプラーナヤーマ(呼吸法)で呼吸数を落とす練習が多くなります。
ヨガでは、呼吸を制御する(調気法)で呼吸を制御し、それによって心を変化させようとします。
腹式呼吸では副交感神経、胸式呼吸では交感神経が刺激されますが、ヨガの呼吸法はハタヨガの経典では胸式呼吸となります。
また姿勢によっても異なり、背中が丸くなるポーズは腹式、胸を張ったポーズでは胸式呼吸が中心。
副交感神経を優位にするなら前屈系をアーサナを多くししたり、腹式呼吸を意識するとリラックスできるといいます。
ヨガは血管のストレッチ!?
循環と血管について、ヨガの生理学から学びます。
直立している人間は、重力によって足のほうに血液がたまりやすくなっています。
ヨガでは逆転のポーズによって、下半身にたまった血液を心臓のほうに血流を戻すことができ、循環を助けます。
また、血管の老化を防ぐ物質NO(一酸化窒素)が、有酸素運動やストレッチによって多く産出されると報告されているそうです。
ヨガは血管のストレッチであり、血管を若く保つことが長寿の秘訣かもしれません。
ヨガはまた、血圧にも変化を与えられます。逆転のポーズなどでは血圧を上げられますが、血管が弱っていたり、緑内障が合ったりする場合はリスクになるので、行わない方が良いとのことです。
神経や脳、内分泌もヨガでコントロール?
神経について、ヨガの生理学から学びます。
神経には中枢神経と、末梢神経があり、中枢神経は脳や脊髄、末梢神経は、情報を脳に伝える感覚神経と命令を筋肉に伝える運動神経からなります。
ヨガの練習によって、神経の情報の伝導速度が上がり情報を伝えやすくなる「促通」や、繰り返しで無意識に動けるようになる「学習」に効果があり、自分の意識をより繊細な部分に向けられるようになります。
ヨガの脳への影響について
人間の脳は発達することによって不快な記憶(恐怖や不安)を残し妄想で強くする癖がついてしまっています。
しかしヨガでは、今に集中し体に焦点を当てるアーサナや呼吸法で、不快な過去の恐怖や未来への不安を消します。
脳の中の「今」を感じる部分は、内臓感覚を感じる「島皮質」という部分。
「内臓の感覚に集中して意識を向けると不安が抑制される」と考えればよいそうです。
ヨガの内分泌への働きかけ
ホルモンの分泌は、ある姿勢を2分以上とると変化することがわかっています。
姿勢で変化するホルモンには、堂々とした姿勢で分泌されるテストステロンや、ネガティブで内向きな姿勢ではコルチゾールというストレス状態で炎症を落ち着けるホルモンがあります。
うつを予防改善するセロトニンややる気を出すドーパミンも運動することで分泌されます。
幸せホルモンのオキシトシンや、抗ストレス作用のあるGABAもヨガで分泌されることがわかっています。
アーサナが薬の処方のようになる日が来るのかもしれません。
体と心はつながっている
心を緩めるには体を緩めるといいとわかっています。
ヨガは心の制御を目的としていますが、自分で体を弛緩させるために練習が必要になります。
内臓おもに消化器をヨガで浄化
内臓について、ヨガの生理学から学びます。
内臓の状態は、心や免疫に影響を与えるので、アーサナやプラーナヤーマの準備として日常的に浄化法をおこなうそうです。
ヨガのクリア(浄化法)の6つの方法
①ダウティ:食道、胃の浄化
②バスティ:直腸の浄化
③ネイティ:鼻の浄化
④トラタカ:目の浄化
⑤ナウリ :内臓の浄化
⑥カパラバーティ:鼻と額の浄化
鼻の浄化のひとつ、ジャラネイティは鼻うがい。
カパラバーティは、調気法の準備。ナウリというのは内臓のマッサージ。
またナーディーショーダナという片鼻呼吸も鼻の浄化法だそうです。
これらのクリアは朝食前に行う浄化法で、食後2時間はヨガの実践は避けるほうが良いとのことです。
浄化法だったのですね。
内臓に関係するアーサナ
捻りや逆転のポーズは内臓に関係するポーズです。
逆転のポーズは内臓を重力から解放、捻りは内臓のマッサージ効果があります。
ヨガはクリアやアーサナで内臓を整えますが、内臓に意識を向けるのは「今の状態」に自分を集中させるとても良い方法。
ヨガの生理学の学んだまとめ
日頃ヨガのレッスンを受けているときに、先生のガイドで体に意識を向けますが、全体としてヨガの生理学をひととおり学べたことで、なぜそれをするのかがわかった気がします。
ヨガの体の動きや呼吸法と、体、心は密接に働きあい、関わりあっていることが理解できました。
ヨガの練習の時には、体の中で起きている変化にも意識を向けて理由を考え、より効果的な練習をしたいと思いました。