今回は、ストレス対処法としてお医者さんからみてヨガを患者にすすめられる?という疑問について勉強したのでシェアします。
現代では、ストレスを減らしたり健康な体を維持したりするために、多くの人がヨガをやっています。
最近の研究でも、ヨガが健康な人のストレスを減らしたり、ストレスによる心身の不調に有効であること、またその仕組みがわかってきています。
ヨガを行っている人の半数近くが、なんらかの通院治療を続けながらヨガ教室に通っているのだそうです。
ストレス対処法としてヨガを始めたい人や、治療を続けながらも安全で有意義にヨガを学びセルフケアするにはどうしたらいいでしょうか。
実は、お医者さんがストレス性疾患の患者さんにヨガをすすめるときの、セルフケアの方法や注意点をまとめたガイドがあります。
厚生労働省の「総合医療」情報発信サイトで公開されている、患者用のヨガ利用ガイドを読んでみました。
難しい内容をわかりやすい言葉でかみ砕いて、ポイントをまとめてみたので紹介します。
この資料は、厚生労働省の「総合医療」情報発信サイトの「総合医療エビデンス」>「構造化抄録」> 「ヨガ」 のページに掲載されています。
九州大学大学院の岡孝和先生を中心とするチームの科学研究費補助金を使った研究「統合医療としてのヨガの安全性と有用性に関する研究」の成果物のひとつです。
ストレス関連疾患に対するヨガ利用ガイド 患者用に学ぶ
「ヨガとは?」
ヨガとは、身体と心を健やかに保つためのものですが、特に以下の3つの要素が練習されています。
ポーズ(アーサナ)
呼吸法(プラーナーヤーマ)
瞑想(ディアーナ)
ヨガのポーズ、呼吸法、瞑想は、ストレス性の症状や病気に有用だという研究報告が増えてきているそうです。
具体的には、次のように書かれていました。
健康な人にとっては、不安感や抑うつ(気持ちの落ち込みなどが続き、考えや行動がいつもどおりできなくなっている状態)、ストレスを感じるのを減らし、ストレスによる体や心の不調を改善するのに役立ちます。
ストレス性疾患の患者さんにとっては、ストレスによる体や心の不調を改善するのに役立ちます。
さらにお医者さんでの治療の補助として効果が期待できます。
ストレス性疾患にかかっている人がヨガを習うのは意味があることです。
ただし、ヨガを始めるときには、お医者さんとヨガの先生の両方によく相談してからヨガを始めましょう。
ヨガは心身を整えたいと願う人にとって身近なものなんですね!
ストレス関連疾患に対するヨガ利用ガイド 患者用に学ぶ
「ヨガでストレスが和らぐ仕組み」
ヨガがストレスに対して有効なのは、「ヨガを練習するとストレスに対処するときの反応と逆の反応がおきる」ため、だそうです。
ヨガ利用ガイドにどのようなことが書いてあるか、見てみましょう。
心にストレスがかかるとき
ストレスを感じたときには、人間は不安感や落ち込み、怒りなどの不快な気持ちを覚え、不眠になったりもします。
体の症状によって冷静さを失って「もうだめだ」というような極端な考えになったりもします。
正しくヨガを行うと、このような不安、落ち込み、怒りなどの不快な気持ちが減り、極端な考えや不眠が改善されることが報告されています。
またヨガを練習すると、脳の中にストレスを減らす物質「GABA(ギャバ)」が増え、不安の時にお医者さんで処方されるお薬と同様の効果があるのです。
定期的にヨガをやるほどGABAは増えやすいということがわかっています。
身体にストレスがかかるとき
身体にストレスがかかった時には、体では交感神経が良く働き副交感神経の働きが抑えられるという状態がおこります。
これは、ヨガを行うとちょうど逆の状態。
副交感神経の働きが良くなることで、炎症や痛みが抑えられ自然に呼吸が長くなります。
またヨガでは、身体の中から生まれる感覚に意識を向けます。
ストレスがかかった時、私たちは自分の身体の「お腹がすいた、疲れた、休もう」という感覚を無視しやすくなってしまいます。
そこで、ヨガで自分の身体の声に意識を向けることによって、セルフケアが行いやすくなります。
患者がヨガを習うことに対してのお医者さんの意見
ヨガ利用ガイドには、ストレス性疾患の患者さんがヨガを習うことについて、お医者さんがどう思っているかの調査の結果がまとめられていました。
2013年の調査では、患者さんがヨガを始めたことで、お医者さんには良かったという意見と、心配だという両方の意見があるのがわかりました。
【お医者さんの意見:
患者がヨガを習いはじめてよかった!】
・うつ病が和らぎ、薬を減らせた。
・リラックスできるようになった。
・不眠が改善した。
・元気になった。
・便秘が改善した。
・肥満が改善した。など
【お医者さんの意見:
患者がヨガを習うのは心配だ!】
・頑張りすぎるのではないか。
・無理をするのではないか。
・症状(痛みや炎症)が悪くなってしまうのではないか。
・治療を中断してしまうのではないか。
心配なことは起こるかもしれないと思っていること、だというところが興味深かったです。
ヨガの特徴から見た注意点
ヨガ利用ガイドには、持病がある人、特にストレス性の病気を持つ人がヨガを練習する場合に、気をつけたほうがいいことがいろいろな観点からまとめられていました。
ヨガのポーズ練習で気をつけること
ヨガ利用ガイドで、ヨガのポーズ練習で気をつけるようにということは、次のようなことです。
ヨガではいろいろなポーズを練習するので、正しく練習すると筋力がついて身体が軽く柔らかくなり、バランスを取る力もついてきます。
その反面で、筋肉痛や関節痛を起こすことがあります。
特に
・膠原病
・整形外科にいっている人
・ステロイドを飲んでいる人
・がんの患者さん
はお医者さんによく相談してから始めましょう。
また高血圧や緑内障の人は逆立ちを、動脈硬化の人は首を強く曲げるのは控えましょう。
ヨガの呼吸の練習で気をつけること
ヨガ利用ガイドで、ヨガの呼吸練習で気をつけるようにということは、次のようなことです。
ふだんよりゆっくりした呼吸や意識的な呼吸を練習することで、呼吸を通して気持ちをコントロールしたり、腹式呼吸で副交感神経の働きを強めることができるようになります。
その反面で、はやい呼吸は過呼吸発作を引き起こしやすくなったり、不安が強くなることがあり、高血圧の人では息止めは注意が必要です。
該当の人は、ヨガの先生にあらかじめ伝えておきましょう。
身体の内部からおきる感覚に意識を向けるとき気をつけること
ヨガ利用ガイドで、身体の内部の感覚に意識を向ける時に気をつけるようにということは、次のようなことです。
身体の声(体調)に従ってセルフケアが行いやすくなり、自分の身体を大切に感じるようになります。
その反面で、いやな体験を思い出して気持ちがつらくなったり、痛みのある病気の方は一時的に痛みを強く感じたりすることも起こり得ます。
目を閉じての瞑想で気をつけること
ヨガ利用ガイドでは、目を閉じての瞑想についても注意しています。
深いリラックスや静かで平和でおだやかな気持ち、自分や他人をそのまま受け入れられる気持ち、前向きな気持ちになれます。
その反面で、目を閉じると人によっては不安が増すことがあります。
幻覚のある方は目を閉じての瞑想は練習しないほうがいいです。
「不安がなければ目を閉じましょう、閉じなくてもいいです。
その場合は視線をを斜め下に向けましょう」
というような声かけをしてくれます。
それは、このような理由があるからなのですね。
交感神経と副交感神経の働きの変化で気をつけること
ヨガ利用ガイドで、自律神経の働きの変化で気をつけるようにということは、次のようなことです。
ストレスがかかると交感神経が強く働くので、ヨガをすると交感神経の働きを抑えストレスへの反応を抑えます。
その反面で、病気の種類によっては交感神経の働きを下げるのは症状を悪くすることがあります。
胃潰瘍や起立性低血圧、気管支喘息のある方などは注意が必要です。
健康な人対象のヨガ教室で注意すること
ヨガ利用ガイドで、一般のヨガ教室で注意するようにということは、次のようなことです。
健康な人向けの練習をすると、消耗性疾患やうつ病の患者さんには体力的にきつく、疲れてしまうことがあります。また、音楽を流すような場合は、聴覚過敏や片頭痛発作の後はつらく感じることがあります。
あらかじめお医者さんからの注意をヨガの先生に伝えておくことが大切です。
セルフケアとしてのヨガで気をつけること
ヨガ利用ガイドで、セルフケアとしてヨガをするときに気をつけるようにということは、次のようなことです。
健康を保つためによい習慣を身につけられるヨガですが、その反面で、指導者がいない場合、頑張りすぎたり、自己流で力をいれすぎたりして有害になりやすくなるそうです。
病気の状態によって、ヨガよりも安静やお薬での治療やカウンセリングなどのほうを先にするべき時もあります。
まとめると、健康な人にとっては日々のストレスを解消し、健康を維持、向上させるのにとても良いヨガですが、病気の人にとってはお医者さんとヨガの先生の連携の上で、行うことが大切です。
ヨガを習い始めてよいタイミング?悪いタイミング?
ヨガ利用ガイドには、ヨガを始めていいタイミングかどうかの判断の目安がまとめられていました。
【まだ始めないほうがいい時期】
・検査中、診断がまだ出ていない時期
・身体の症状が落ち着いていない時期
・とても疲れている時期
・精神的に不安定な時期
・お薬を変更している時期
・セルフケアを負担に感じる時期
・お医者さんがヨガを勧めない時期
【ヨガを始めても良い時】
・血液検査の値が落ち着き安定している時期
・身体も精神面も追いついて体力に余裕が出た時期
・疲労感がとれ体力が回復している時期
・うつ病の復職プログラムの時期
・精神的に落ち着き自分の内面に向き合える時期
・お薬の変更がない時期
・セルフケアを身に着けたほうがいい時期
・お医者さんがヨガを勧める時期
逆にいろいろ安定してきた回復期にはヨガを始めるのに良さそうですね。
ストレス性疾患の方にあったヨガとは?
ヨガ利用ガイドには、ストレス性疾患の方に合ったヨガについて、次のように書かれています。
難しいポーズや限界まで身体を伸ばしたりせず、ゆっくりと呼吸をしながらポーズをして、身体の動きを心地よく味わい、終わったあとでくつろげることが大切だそうです。
研究結果では、その日の体調により、とくに精神的なきつさがあるときは、ヨガで有害なことば起こる割合が6倍にもなるそうです。
普通のヨガ教室よりも、ゆったりと、ポイントは
・体調にしたがうこと
・無理をしないこと
・頑張りすぎないこと
・人と競わないこと
・心地よいペースとポーズ
が大切とのことです。
ヨガを安全に有意義に習い始めるには?
ヨガ利用ガイドが薦める安全にヨガを習い始めるときの注意点は次のようなことです。
ヨガを始めたい患者さんは、お医者さんと、ヨガの先生にそれぞれお伝えすること、聞いておくことがあるそうです。
【お医者さんと相談】
・ヨガをしたいと伝えましょう。
・ヨガを始めてよいか聞きましょう。
・どのような点に注意するべきか聞きましょう。
・お医者さんからヨガの先生への申し送りを書いてもらいましょう。
【ヨガの先生と相談】
・病院にかかっていることと病名、
お医者さんからの注意点を伝えましょう。
・お医者さんからの申し送りを書いてもらった方は
ヨガの先生に渡しましょう。
さらに注意することがありました。
・病気や薬のことはお医者さんに相談しましょう。
・勝手に治療を中断しないようにしましょう。
・勝手に薬を減らしたりやめたりしないようにしましょう。
・薬を減らしたいときはお医者さんに相談しましょう。
ストレス対処法として安全で有意義にヨガを学びセルフケアするにはどうしたらいいかのまとめ
ヨガ利用ガイドからわかったことをまとめます。
ストレス性疾患でお医者にかかっている人が、ヨガをセルフケアのために安全に有意義に学ぶには、
・お医者さんに相談して始める
・ヨガの先生に伝えておく
そして
・体調にしたがうこと
・無理をしないこと
・頑張りすぎないこと
・人と競わないこと
・心地よいペースとポーズ
という点に気をつける必要があることがわかりました。
ヨガ利用ガイドの15ページ、16ページには、お医者さんからヨガの先生への申し送り事項の記入シートと記入例がついています。
お医者さんがヨガについて詳しくない場合もあるので、お医者さん向けのヨガの利用ガイドも用意されています。
ゆっくりレベルのコースもたくさん用意されています。
リラックスにぴったりのこんなコースがたくさんあります。
☘ ディープリラックスヨガ
☘ ねころびヨガ
☘ リラックスフローヨガ
☘ 疲れリセットヨガ
☘ からだほぐしヨガ
☘ 眠りのヨガ「ヨガニードラ」
メンタルケアにもぴったりのコースをこちらの記事でまとめてご紹介しています。
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