瞑想にはいろいろな種類があります。
YOGA(ヨガ)、マインドフルネス、ハタヨーガの3つの瞑想について、それぞれの違いや特徴を知って、自分に合う瞑想法を自分で選択できるようになりたいですね。
アンダーザライトのオンラインサービス「ヨガ放題」の継続特典で、向井田みお先生の瞑想についての講座を視聴することができました。
YOGAの瞑想とマインドフルネス瞑想、ハタヨーガの瞑想法の特徴と違いは何か?ということが学べましたので、シェアします。
それぞれの瞑想法を実践することもできる1時間半の濃い講座でした。
「向井田みお先生
瞑想の違いを学ぶ〜YOGA,マインドフルネス、ハタヨーガ」
2020年4月「オーガニックライフTOKYO」より
「向井田みお/瞑想の違いを学ぶ〜YOGA,マインドフルネス、ハタヨーガ」の目的
タイトルのとおり、「YOGA」,「マインドフルネス」、「ハタヨーガ」の3つの瞑想法の特徴と違いを理解すること、そしてそれぞれの瞑想を実践してみる講座です。
この講座の目的はそれぞれの瞑想の違いを知って、自分に合う瞑想法を自分で選択できるようにするために基礎知識を学ぶことでした。
まず、はじめにそれぞれの瞑想の概要からです。
YOGAの瞑想
YOGAは2世紀~5世紀「ヨーガ・スートラ」というテキストに書かれたものです。
「自分と自分でないものを見分ける」ために、「ジャパ瞑想」を行います。
そして、その瞑想の最終段階とプロセスを「サマーディ」といいます。
マインドフルネスの瞑想
仏教の伝統。インドで生まれそこから離れアジア圏で発達し(南伝仏教)、そこから西洋へ伝わりました。
マインドフルネスのおおもとになるテキストは「サティ・パッタナスッタ(大念処経)」というもの。
ベースになっているのは「ヴィパッサナー瞑想」で、「あるがままを観る」というものがマインドフルネスです。
ハタヨーガの瞑想
体を動かし、呼吸を整えるハタヨーガでは、「ハタ・プラディーピカー」というテキストに基づいています。
ハタヨーガの瞑想では「ナーダ音」という内なる音に心をつなげて瞑想していきます。
内なる音に心をひとつにつなげる状態を「サマーディ」、状態を「ウンマニ」といいます。瞑想の深まった状態は「ラージャ・ヨーガ」ともいいます。
YOGAの瞑想とは?
YOGAの瞑想のゴールとは?
YOGAの経典、紀元200年から500年ころパタンジャリによって編纂されたといわれる『ヨーガスートラ』。
自分の心と身体を整えていき、あらゆる苦悩から自由になっていく方法を195節にまとめ再編集されています。
『ヨーガスートラ』に書かれた内容は、YOGAのゴールに至る方法です。
ヨガのゴールとは、「苦悩からの自由」になる方法です。
具体的には、「瞑想を頂点にした修行(8つの方法)」で、最終的には心という道具をコントロールすることができるその方法です。
瞑想が深まった頂点の状態(サマーディ)と言われます。
YOGAの瞑想とは苦悩から自由な”本来の自分”を見分ける方法
YOGAでいちばん見極めていきたいものは、”本来の自分”(プルシャ)は苦悩から自由であるということ。
苦悩しているのは、心・体という現象(プラクルティ)=変わりゆくものであって、それが自分だ、と思い込んでしまっている。
ゆえに 自由な”本来の自分”(プルシャ)と、苦悩する心(プラクルティ)を見分けよう、ということがヨーガスートラがいいたいことです。
そしてそれが”本来の自分”(プルシャ)に至ることができ、自由のままでいることができる、苦悩から自由になる方法です。
苦悩から自由な”本来の自分”を見分ける方法が、すなわち=瞑想サマーディ(三昧)だと、『ヨーガスートラ』の第1章17,18節に書かれています。
”本来の自分”を見分ける方法の最初の段階は、サンプラッニャータ(サマーディ)という分析の段階。
肉体、感覚、心、自我意識と”本来の自分”(意識の源としての自分)を意識的に見分けていく瞑想のことです。
分析が終わると、アサンプラッニャータ(サマーディ)(アは否定形)という段階になります。
”本来の自分”のままでいることができる段階です。
YOGAの練習の度合いによって、サ・ビージャ・サマーディ(苦悩の種は残る状態)、瞑想の練習中はいいが、日常生活に戻ると戻ってしまう状態がしばらく続きます。
そこから、ニル・ビージャ・サマーディ(苦悩の種もない状態)、瞑想をしなくても悩みのない状態、カイバリアといわれる状態になります。
サマーディに至る心の準備瞑想
サマーディに至るために効果的な準備方法は、『”自然の摂理”(イーシュヴァラ)を理解する』ということです。
それは『ヨーガスートラ』 第1章23~29節に書かれている大事なコンセプトです。
ウパニシャッドに書かれている聖音AUM(オーム)という言葉、全世界のすべてを表現しているといる言葉
A:物質
U:あるともないともいえないもの
アイデアや、夢の世界
M:完全に潜在的な状態
これらの聖音を繰り返し唱え、その音に象徴されている自然の摂理(イーシュヴァラ)を理解することを「JAPA」と言います。
ジャパ瞑想とは、数珠のようにひとつひとつ108個ついているのを繰っていって、オームオームと唱えていくものです。
これは、日本のお念仏のベースかもしれないといわれています。
音が象徴する意味と一体になっていくことにより、心の中のさまざまなものを落としていくものです。
ジャパ瞑想のメリット
ジャパ瞑想のメリットは9つのYOGAを邪魔する障害(アンタラーヤ)を滅することができることです。
それは例えば、病気、怠惰、イライラ委、疑いetc…などです。 1章30節
さらに、4つの症状(ヴィクシェーパ)を消すこともできます。
それは例えば、体に震えがでたり、不安定な呼吸etc…などです。1章31節
ジャパ瞑想によって、このような苦悩の種を落としていくことができ、サマーディへの準備ができていきます。1章32節
サマーディ(三昧)へ向かう方法
2章45節には、自然の摂理の理解(イーシュヴァラ・プラニダーナ)によって、サマーディの成功(サマーディ・シッディ)は可能であると書かれています。
3章1~4節には、その瞑想が3段階で書かれています。
①集中(ダーラナ)
1つの対象に 自然の摂理へ
②瞑想(ディヤーナ)
長い時間(48分間)集中
③三昧(サマーディ)
対象と一体になる
この3つのプロセスをサンヤマといいます。
サマーディ(三昧)への瞑想をすると?
3章5~55節には、瞑想の3ステップを理解していくと、次のように書かれています。
①さまざまな超能力(ヴィブーティ)
私たちの潜在的な能力が開花する
②無知と混乱からの解放
自分の権威や持ち物に執着するようなことがなくなる
③苦悩からの自由(カイヴァリヤ)達成
サンヤマを続けていくと達成できる
YOGA瞑想のまとめ
YOGA瞑想についてまとめると、次のようになります。
ジャパ瞑想(自然の摂理のシンボルとを唱え、心を定める)
↓
“OM”音、その後の沈黙から分析
心身(プラクルティ)と、観る意識(プルシャ)
↓
サマーディ(三昧)…深い瞑想
↓
苦悩から解放
引用:講義パワーポイント資料より
YOGAの瞑想を実践
向井田先生がインドに留学していたときの、師のジャパ瞑想のやり方で10分間の瞑想を実践します。
ジャパ瞑想
自然の摂理(AUM)を唱える
1.声に出して唱える
ウッチゃ・ジャパ
2.小声で唱える
マンダ・ジャパ
3.つぶやき声
ウパーンシ・ジャパ
4.心の中
マナーンシ・ジャパ
向井田先生の参考経典
やさしく学ぶYOGA哲学 ヨーガスートラ 向井田みお
マインドフルネス瞑想とは?
マインドフルネスとは、元は仏教の瞑想でした。
仏陀の教え(正念)、つまり、「あるがままを観る」(サティ)ということがベースになっています。
南伝仏教というスリランカ、ミャンマーなどインド周辺に広まっていった仏教です。
ブッダの直接の教えをまとめた経典を阿含経といい、自分の世界の見方をブッダの見方に変えていく方法がまとめられているのが『サティ・パッターナ・スッタ(大念処経)』というものです。
『サティ・パッターナ・スッタ(大念処経)』の目的は、「苦悩からの自由(ニルバーナ)」です。
これは、YOGAとほぼ同じです。
ヨガではサマーディ、モクシャ、カイヴァリアといったりしますが、サンスクリット語から派生したパーリー語で仏教の経典が書かれていますが、その言葉ではニルバーナといいます。
仏陀がクル国に滞在していたとき、修行者たちにニルバーナ(涅槃)への唯一の道として教えたのが、『サティ・パッターナ・スッタ』です。
その中では、四苦八苦からの自由、あるがままを正しく観る八正道(正念)ということが言われています。
ニルバーナに至る方法としては、次の2つのことが言われています。
①止観(シャマタ)
心を修めていく、止めていくこと。
②観(ヴィパッサナー)
あるがままを観ていくこと。
マインドフルネスのオリジナルの瞑想法
マインドフルネスのオリジナルの苦悩から自由になる瞑想法は、次の2つです。
①止観(シャマタ)とは、心の働きを静め、心を一つの対象に結びつける考え方で、呼吸を通してみていく呼吸瞑想(アーナーパーナ・サティ)があります。
②観(ヴィパッサナー)とは正しく観る考え方で、次のような種類があります。
1.身念処 体を観る
2.受念処 一切は苦(ドゥッカ)
一切皆苦
3.心念処 心(チッタ)は無常
諸行無常
4.法念処 自然の法
諸法無我
しかし、これらのオリジナルの瞑想法は歴史の中ですたれていってしまい、1000年くらい忘れ去られていました。
そして仏教瞑想は次のように再び見直されていきました。
マインドフルネス瞑想の復活
1850頃からリバイバル運動が始まり、仏教瞑想が再び見直されていきました。
ミャンマーのウ・ナーラダ長老(1868-1955)は、ヴィパッサナー瞑想のリバイバル運動の中心僧侶で、解脱への直接方法=瞑想を提案しました。
ウ・ナーラダ長老は解脱への直接の方法が瞑想であり、『念処経』(ねんじょきょう)『サティ・パッターナ・スッタ』を一般の人に理解できるように説明した人です。
次のマインドフルネスの立役者は、ミャンマーの、レディ・サヤド-(1846-1923)です。(サヤドーとは修行者という意味)
仏典の再解釈をし、あるがままを観ていくヴィパッサナー瞑想を見直し、ムーブメントにしました。
そして呼吸の観察(アーナーパーナ・サティ)や体・心を観察(ヴェーダナー)を広めていきました。
それをさらに広めたのが、レディ・サヤドーの弟子の、ウ・バキン(会計士、経済相)と、さらにその弟子のゴエンカ(商人、在家指導者)です。
ゴエンカは世界中にヴィパッサナー・センターを作りました。
ヴィパッサナー瞑想のグローバル化
1950頃からはヴィパッサナー瞑想が、ミャンマーから、タイ、ベトナム、スリランカ等へ広まっていきました。
さらに、仏教徒に限らずキリスト教圏の方でもできるように、マインドフルネスという言葉でヨーロッパに広めました。
フランスに広めたティク・ナット・ハン(ベトナム僧侶)や、スリランカで修行したニャナポニカ・テラ(ドイツ人)らによります。
アメリカでのマインドフルネスの広まり
アメリカには、ウ・ナーラダ長老から瞑想を学んだマハーシ・サヤドー(1904-1982)が、1979年にマサチューセッツに瞑想センターをつくり、大きく広まっていきました。
アメリカでのマインドフルネスの流れは次のようになります。
1965
移民法改正(東洋のグルたちが渡米)
1970~
東洋思想の流行(ヒッピー)
あるがままを受け入れる
1980~
「マインドフルネスストレス低減法」
ジョン・カバット・シン著
ヴィパッサーナーの実践 禅(曹洞宗)
YOGAのポーズと西洋科学の融合
⇒アメリカの一般の人に広まった
2014~
マインドフルネス ビジネス界に浸透
「Search Inside Yourself」
チャディー・メン・タン著
元Googleエンジニア
Googleの企業研修に
⇒アメリカの勝ち組に広まる
マインドフルネスと治療プログラム
現在、マインドフルネスは、あるがままを観ていくことで苦悩から自由になる方法のエッセンスから、さまざまな治療にも使われていっています。
・マインドフルネス認知療法(MBCT)
レーズンエクササイズ、ボディスキャン、呼吸法、静座瞑想
・弁証法的行動療法(DBT)
・アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACTアクト)
A=Accept C=Choose T=take action
(受け容れる―選択する―実行する)
マインドフルネスブームでライフスタイル化
2015年からはマインドフルネスの大衆化が進み「マインドフルネス・ムーブメント」が起きました。
様々な書籍やテレビなどでも取り上げられて日常生活で実践され、ライフスタイルとなっていっています。
マインドフルネスのオリジナルを実践
アーナーパーナ・サティ(呼吸の観察)
↓
ヴィパッサナー(あるがままを観察)
向井田先生のマインドフルネス参考資料
ヴィパッサナー瞑想: 智慧を開発し解脱に導くマインドフルネスの実践教本 (サンガ文庫)
ハタヨーガの瞑想とは?
ハタヨーガのいちばん有名な経典は15世紀の『ハタ・プラディーピカ』です。
内容はハタヨーガのゴールに達する方法ですが、現代人に限らず15世紀の頃の人たちもハタヨーガに迷っていたのでその解説書として書かれました。
そのゴールはやはり、「苦悩からの自由」です。
生きているときに感じる病・老・死の3つの現象や、最終的に”生と死”の繰り返し(輪廻)のプロセス、”生老病死”すべてから自由になりたい、という方法が、ハタ・ヨーガだというのだ、と書かれています。
瞑想で苦から自由になる
苦から自由になるその方法としては、瞑想(自然との一体化)すること。
呼吸法や身体のうごきは、瞑想のための準備です。
ポーズ、呼吸法、食事、浄化、自律神経操作などで、体を内側から整えていく、それらのことは瞑想に至るためのハタヨガの技術であり、今風にいうと、自律神経を最適化しようという動きです。
ある程度落ち着いた体の状態を作ってから瞑想を行うとスムーズにいけると書かれています。
ハタヨーガの経典に書かれているのは、ハタヨーガの瞑想は、ナーダ音に集中していくということ。
「ナーダ・アヌサンダーナ」と言います。
『ハタ・プラディーピカ』の第4章が瞑想の章で、そこに書かれています。
ハタヨーガの瞑想はナーダ・アヌ・サンダーナ
耳を閉じて五感を内側に向けていき、右耳に集中していき、最終的に心臓に集中していきます。
そこから生じる自然な音に意識を向けていきます。
内なる音を聞く瞑想(ナーダ・アヌサンダーナ)
『ハタ・プラディーピカ』4章に書かれている方法は次のようなものです。
(80節)眉間に意識を集中(ブルーマッデャ)
(81節)内なる音(ナーダ音)によって、サマーディを得る
(82節)両耳を両手でふさぎ、体の内なる音を聞く
(83節)15日続けることで、散漫な心を克服し、喜びを得る
(84節~)様々な音が聞こえてくる。大きな音から小さな音へ
84節から書かれている内なる音は次のように変わっていくと書かれています。
(84節~86節)内なる音
ジーン
海の音
雷
太鼓
シンバル
小さな太鼓
ほら貝
鈴
角笛
琵琶(ヴィーナ)
蜂の羽ばたき音
(87~105節)瞑想と効果
(92節)内なる音(ナーダ音)によって、心は動かない
(93節)ヨーガの完全を求める人は、ナーダ音だけに瞑想すべし
ナーダ・アヌサンダーナだけ行う
(96節)あらゆる不安から解放
(100節)内なる音が心臓(アナハタ)から聞こえると心は消える
(105節)ナーダ・アヌサンダーナによって、過去の悪行、罪は消滅
(106節~最後114節) サマーディへ
(107節)サマーディのヨーギーはあらゆる状態から自由に
(108節)死に破壊されず、輪廻(カルマ)に悩まされない
(109節)他人の意識からも自由に
(110節)心は不動に
(111節)暑さ、寒さ、苦や楽からも自由
(114節)サマーディなしにヨーガの達成はない
(それでもヨーガを完成した言う人はたわごとを言う偽りの者)
向井田先生の参考資料
やさしく学ぶYOGA哲学 ハタヨーガ基礎と実践
ナーダ音を実践
ハタヨーガの瞑想をナーダ音の実践で行っていきました。
最終的に蜂の羽ばたきの音がすると完成するといわれています。
初めにハミングの音(蜂の羽ばたきの音)をつくり、それを閉じ込めて実践していきます。
ヨガ・マインドフルネス・ハタヨーガの瞑想の特徴と違いのまとめ
瞑想にも全く違うルーツとアプローチがあるということがわかりました。
YOGAの瞑想は、自分と自分でないものを見分け、ジャパ瞑想を通し自然の摂理を理解しAUM音から深い瞑想サマーディの状態に入り、苦悩から解放される、というものでした。
仏教から始まったマインドフルネス瞑想は、あるがままを観ていくヴィパッサナー瞑想で、呼吸や心、体の観察を通し、苦悩から自由になるというものでした。
ハタ・ヨーガの瞑想は、内なる音ナーダ音に集中し、瞑想で自然との一体化し、生老病死すべての苦悩から自由になる、というものでした。
それぞれアプローチは違うものの、目的が「苦悩からの自由」であるという共通点がありました。
自分に向いている瞑想は呼吸を観ていくタイプのものだと気づきました。
とても有意義な向井田みお先生の講座を視聴できるチャンスが得られ、とてもありがたかったです。