2019年9月14日(土)から、11月4日(月)まで横須賀美術館で『サラ・ベルナールの世界展』 が開催されました。
海に面した絶好のロケーションが大人気の横須賀美術館。
アンニュイな雰囲気の秋の海辺を散策しつつ、19世紀末の華やかなパリにタイムトリップして、ベルナール、ミュシャ、ラリックに触れて芸術の秋を堪能できた企画でした。
横須賀美術館での「パリ世紀末 ベル・エポックに咲いた華 サラ・ベルナールの世界展」の初日に観覧して見どころをレポート、まとめました。
他会場での観覧の際のご参考になれば幸いです。
横須賀美術館の観覧割引、クーポン情報、お得なアクセス情報も、最後にまとめています。
※観覧中は写真撮影できませんので、本記事中で使用している作品の写真はパブリックドメインのフリー画像を使用しています。(著作権が切れているもののみ)
サラ・ベルナール ミュシャ ラリックとは
予習編として開幕前情報として、サラ・ベルナール、ミュシャ、ラリックについてこちらの記事にまとめましたが、簡単に再掲します。
サラ・ベルナール(1844?~1923)は、フランスの「ベル・エポック」と呼ばれた時代を象徴する大女優です。
ベル・エポックとはフランス語で「良き時代」や「美しき時代」と訳される、19世紀末から第一次世界大戦勃発の1914までの、パリが繁栄し、華やかな文化が花開いていた時代を指す言葉です。
サラ・ベルナールは舞台女優としてだけでなく、いわゆるパトロンとして、ミュシャやラリックを見い出した人としても知られています。
自分の劇団サラ・ベルナール座を立ち上げ、主演作「ジスモンダ」のポスター製作で、新人画家アルフォンス・ミュシャを抜擢、また、舞台ではルネ・ラリックのジュエリーを用い、次々と成功者を生み出していきました。
第Ⅰ章 サラ・ベルナールの写真と肖像
横須賀美術館で「サラ・ベルナールの世界展」の会場に入るとまず最初に、豪華なイブニングドレスが目に飛び込んできます。
絹で作られビーズやサテンのリボンをふんだんにあしらった、ペールオレンジのイブニングドレス。
サラが優雅に身にまとったところが想像できます。
また、サラのイニシャルをあしらったティファニーによる純銀製の特注の食器類、それから彼女が愛用していた調髪道具セット。
目の保養ができるとはこういうこと!と思える展示品の数々です。
写真が語るサラ・ベルナール
サラ・ベルナールの生きた19世紀末は、写真が隆盛を極めていた時代。
そのため、大女優サラ・ベルナールは「自分自身をプロデュースし、ファッショナブルで完璧な姿」を無数の写真を残してくれました。
特に「サラ・ベルナールの世界展」のポスターの写真にもなっているこちらの写真は、60cm以上もある大きな写真で見ごたえがあります。
「街着姿のサラ・ベルナール」W.&D.ダウニー 62.0×52.0 1902
驚くのはこの写真のサラが50代後半であること! 美しいです。
恋多き女性サラ・ベルナール
ポートレートが残されているのはサラだけではありません。
サラの恋人たち 13人
+夫
一世を風靡した時代の寵児ならではの恋愛遍歴に圧倒されました。
親友による生涯を通しての肖像
サラ・ベルナールの肖像画はロートレックやミュシャが多数描いていますが、中でも、サラの親友のルイーズ・アベマは若き日から晩年までのサラの姿を描き続けています。
演じているときのサラ、けだるい視線を向けてくるサラ、たくさんのサラの肖像画を堪能できます。
第Ⅱ章 女優サラ・ベルナール
女優としてのサラ・ベルナールの人生はまさに「華麗なる」ものです。
18歳で国立劇場「コメディ=フランセーズ」でデビューしたあと、何度か劇場を移り、1880年に自身の劇団「サラ・ベルナール劇団」を立ち上げると演者としてだけでなく、プロデューサーとしても活躍します。
1899年、50代でパリの市立劇場を借り上げ「サラ・ベルナール座」とし、ミュシャ、ラリックを見い出し、ポスターや舞台芸術の面でも成功を収めていきます。
華麗なる舞台
サラ・ベルナールの舞台は、
豪華な衣装
大がかりな舞台装置
劇的な演出
で大盛況だったとのこと。
今回の企画展の目玉のひとつも、豪華な衣装の片鱗に触れられるこの展示でしょう。
美しい舞台の装飾品類が多数展示されています。
ティアラ、ベルト、ブローチ、胸当て、ブレスレットなど。
緻密な作りの煌びやかな装飾品は、サラの豪華な舞台を想像させ、100年以上前のものなのによく残っていたと感動します。
サラ・ベルナールとミュシャ
アルフォンス・ミュシャは、1894年末のサラ・ベルナールの舞台「ジスモンダ」のポスターがきっかけでサラと6年間の専属契約を結び、一躍世に躍り出ました。
展示されているポスターの大きさにまず驚きます。
ほぼ実物大のサラが描かれた2メートルを超えたサイズ!
パリの街にこのポスターが貼られたら、さぞかし注目の的になったであろうと想像できました。
劇的な舞台を華麗に伝えるミュシャのポスターは時代を越えて私たちを魅了します。
サラ・ベルナールとラリック
ルネ・ラリックもサラ・ベルナールとの舞台ジュエリーの仕事がきっかけで成功した人物です。
今回の展覧会の見どころの一つである、「舞台用冠<ユリ>」は、ミュシャがデザインしラリックが製作を手掛けた最初で最後のコラボ作品とのこと。
実物は、真珠とガラスがふんだんに使われていて、写真で見るよりもずっと迫力があるゴージャスさです。
ラリックは、1900年のパリ万博でグランプリを獲得し一躍有名になりました。
また、香水瓶で自然を取り入れたデザインで大人気を博し、アールヌーヴォー、アールデコの第一人者です。
第Ⅲ章 サラ・ベルナールが生きた時代
ベル・エポック(良き時代)のパリの華やぎが紹介されています。
ベル・エポックとは、19世紀末から第1次世界大戦までの華やかな耽美主義が花開き、アール・ヌーヴォー主義が生まれた時代です。
ベル・エポックのポスター
ロートレックの有名なポスター「ディヴァン・ジャポネ」やパリのポスターが多数展示されています。
気づいたのは、黒色が効果的に使われていること。印刷技術の関係でしょうか。
華やいだパリの空気が感じられるようです。
時代の寵児サラ・ベルナール
サラ・ベルナールは、写真やポスターを多用してプロモーションを行って世間の耳目の中心にいました。
当時の風刺画家たちの格好の標的になったそうです。
現在ならさしづめパパラッチがねらう大スターでしょう。
華やかな女優・成功者としてのサラ・ベルナールですが、彼女の生涯の年表を見ると「波乱万丈」という言葉は彼女のことをいうのでは、と思うほど山あり谷ありの人生だったようです。
サラ・ベルナールのキャッチフレーズは、「QUAND MÊME」
フランス語で「それでもなお」という意味だそうです。
不屈の精神をもって生き抜いた「サラ・ベルナール」
愁いを含んだまなざしは、人生の光と影を知っているからこそ生まれたのかもしれません。
サラ・ベルナールの日
1896年12月9日、「サラ・ベルナールの日」という500人もの招待客を招いた一大イベントがパリのグランドホテルで行われました。
フランスで唯一切手になった女優、サラ・ベルナール。
最後のコーナーでは、18分間のサラ・ベルナールを知る紹介映像を観ることができます。
単なる大女優ではなく、時代を象徴する女性だったと知ることのできる展覧会でした。
ショップ・グッズ・図書室の紹介
横須賀美術館ショップ
横須賀美術館のショップでは、「サラ・ベルナールの世界展」の図録(252ページ)を始め、数々のグッズがそろっていました。
横須賀美術館の図書室
横須賀美術館の図書室には、美術・建築・デザインの3万冊以上の蔵書があり、自由に閲覧できます。
今回の企画にちなんだ資料もそろっています。
検索端末(OPAC)があり蔵書・収蔵品の検索ができるだけでなく、司書さんが常駐しているのでレファレンスサービスも受け付けてもらえます。
図書室を紹介できる資料はありませんかと尋ねると、横須賀美術館ニュースをいただけました。
横須賀美術館公式ホームページの 図書室のページはこちら。
図書室については後日詳しいご紹介記事を書く予定です。
図書館については、こちらの記事でも紹介しています。
レストラン アクアマーレ コラボレーションメニュー
「サラ・ベルナールの世界展」× アクアマーレのコラボレーションメニューは
Pot-au-feu ポトフ
です。
ランチコースのメイン料理に選ぶことができます。(単品では注文できませんのでご注意ください。)
ベル・エポックの時代に家庭料理として広く浸透していった当時のフランスの国民食だそうです。
横須賀美術館での「サラ・ベルナールの世界展」関連イベント
「サラ・ベルナールの世界展」の期間中、横須賀美術館では関連イベントも多数開催されました。
詳細は美術館ホームページをご確認ください。
2019年9月22日(日)13時半-16時
ワークショップ
「シャドウボックスでつくる
ユリの花束」
→終了しました
2019年9月23日(月・祝)14時-
学芸員によるギャラリートーク
→終了しました
2019年9月28日(土)29日(日)18時-19時
海の広場の
オペラ・ガラコンサート→終了しました
バリトン歌手 宮本史利さん他
横森由衣 渡邊達徳 芳野亜美 宮川久美 藤谷佳奈枝 他(敬称略)
→終了しました
初日の28日に観覧いたしました。
ソリスト4名、バイオリン、ピアノ、クラリネットの生演奏。オペラ合唱団との「乾杯の歌」
海に、山に、響き渡る素晴らしいソリストの生の歌声!
最後には観客も一緒にヴェルティの椿姫より「乾杯の歌」を手拍子で盛り上がりました。
素晴らしいコンサートでした。
2019年10月26日(土)14時~16時
講演会
「フランスで女優をするということ」
女優・竹中香子さん
→終了しました
「サラ・ベルナールの世界展」のまとめ
昨年9月から全国で巡回展が行われている「サラ・ベルナールの世界展」の横須賀美術館での企画展を観覧してきました。
サラ・ベルナールについてもベル・エポック、ミュシャ、ラリックについて今まで知見がほとんどありませんでしたが、十分楽しめる企画展でした。
19世紀末のパリにしばしタイムスリップして、芸術の秋を堪能できた、横須賀美術館。
皆さんもこれからの企画展に出かけてみてはいかがでしょうか。
横須賀美術館についてのアクセス情報、割引クーポン情報、イベント情報
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